海晴

『エンジェル』
土日は張り切って
あーちゃんのおもり!
遊んであげて
かまってあげて
もちろんちゃんと、こまごまお世話もして。
泣き出してしまっても
まだ自分の気持ちを言葉にできない小さい子。
あれ? そうするとヒカルちゃんや氷柱ちゃんはまだ……
ともかくちっちゃいあーちゃん。
抱っこしたらふわふわして不安定で
私が守ってあげなくては、と心に決めるほどなのに
それにしてはすさまじいエネルギーの持ち主で
泣いちゃうし
大暴れもして
大きなお姉ちゃんたちもぶんぶん振り回す強烈な……
振り回すは、物の例え!
だけどすごいぴったりくる気がする表現で
鼻息も荒くお休みに臨む花の十八歳を
これでもかとおたおたさせる魔物。
理由もなく泣いているのは
たださみしいだけみたいだから
大好きなお兄ちゃんに抱っこして揺られたらすぐに気持ちよくなっちゃう。
こんなに素直な子が
大人の体力でもとうていかなわない暴れん坊だったなんて
やさしく抱っこしているキミもちょっと不思議そう。
まあ、安心してくれたみたいでいいことだ!
目の前からお兄ちゃんとお姉ちゃんたちがいなくなると
たちまち気がついて泣きそうになるもんね。
青空ちゃんや虹子ちゃんが
遊んでもらえなくてさみしいさみしいって言ってるのと同じ気持ちが
やっぱりまだお話も苦手な子でもちゃんと心の中で感じているらしい。
こっちを見つけたらすごい勢いで飛んでくるし。
はいはいで。
かなりの速度が出るの。
お部屋の向こうで
小雨ちゃんに遊んでもらっているんだな、
暖かな景色に
ほんのちょっとお天気が気になって目を逸らしたその時にはもう
もみじみたいな手でぺったんぺったんのぼってくる。
歩幅は小さくても
あーちゃんがそのつもりになったら
距離なんてまるで関係ないものなのね。
今はまだ向こうからやってくるくらいですんでいるけれど
もうちょっと育って、ますます力がついてきたら
ぐいぐい持って行かれそう。
好きに連れ回されたお姉ちゃんたちは
あーちゃんのお部屋のお気に入りの場所にぽんと置かれたと思うと
おやすみ!
また明日!
逃げたらひどいぞ!
みたいなイメージ。
でも一応まだ
青空ちゃんだってそこまでじゃないから。
そこまでじゃないわよね?
あらがえないタフネスで手を引っ張られて
お部屋にしまわれてしまうみたいに
寝るまでいなさいと強要されるほどではないはず。
立夏ちゃんじゃあるまいし。
まだまだ現実的に力づくってことは。
ないんじゃないかな?
普段はわりと落ち着いて遊んでいるあーちゃん。
我が家で一番小さな女の子らしさを見ていると
こんなにかわいい子が
育ったらいったいどうなってしまうんだろうね、
なんて話したりもするけれど。
一年や二年くらいではまだ大丈夫だろう!
もう少し時間が経ったらわからないな?
まあ、そんな日が来たら
改めてまた覚悟を決めましょう。
私の家にはいつも一緒にいてくれる人がいるんだし
あーちゃんが不安になることがあっても
大人になればいつも変わらず
信じていられるから。
大丈夫。
ときどき新しい聞いたこともないような歌で
何かを表現しようとしているらしいあーちゃんは
そろそろお話が出来るようになりたい頃?
ただ単に機嫌がいいだけなんだろうか。
ちゃんと見ているから
その時が来たら、いつだって思いのままを伝えてください。
行動は今より派手でパワフルになっているのかどうか考えたら
どきどきしてしまうけれど
私たちは待っている。
大きくなっても明るくてきれいな歌声で
楽しそうにしているんだろうって
つっついて、なでてあげて
飛び込んでくるのを受け止めたりしながら
みんなで話しているよ。
きっと大きくなったら、そんな昔のことは知らないふりでやっているはず。
だから私も、ときどき思い出すこんな日の話は
すぐ隣で今も笑っている人と重ねていくんだろうな。
早く仲間にしてあげるから
大きく育ってください。
私たちの末っ子のあーちゃん。
同じ休日を過ごして
ずっと忘れない記憶ばっかり作り続ける家族の一員。
私たちはいつまでも、変わることなく家族のままだと決まっているんだから。