『やさしい歌』
連休もおしまい。
思い思いの楽しい日を過ごしていたちびっこみんなは
この短い期間でいろいろな経験をして
ずいぶんたくましく
背も少し高く
むくむくもりもり
空よりも高く
成長は誰も止めることはできないほど育っていったと
そんなように見えるのは
単に、蛍の気分でそうなって見えるだけ。
実際はちょっとなのです!
秋の服を出して小さな背にあててみて
さあ直すぞ!
このときのためにちまちま用意してきた糸と布が
出番を待っているのだから!
と裁縫箱をすぐ手元に用意していたら、あんがいそのまま着られるという。
ちょっとシックな色合いをした
メランコリーな秋の装いに身を包み
新しい気分で弾丸のようにお庭に飛び出していった子たちが
転んで砂だらけになって
そのままお兄ちゃんに飛びついていくのを見て
ああ……
これは
ああ!
と思ったものでした。
ホタもむじゃきに全力で甘えてみたかったなー
みたいな感じ?
でも、もう大人ですもの。
私たちお姉ちゃんは、一日の終わりに家族で集まる晩ごはんの時間
小さい子たちがはりきって駆け抜けた日の報告を聞くだけで
満足というか
怒涛の展開というか
そんなに!?
みたいになるので。
色とりどりの報告のあとで休憩。
ひそかに落ち着いて深呼吸する合間が必要になるくらい。
コーヒーを手に
ふー
今日もたいへんな騒ぎだった!
なんて。
でも、別に大騒ぎをしていたのは蛍じゃないじゃん
と、蛍も思う。
まわりも笑って
蛍ちゃんじゃないじゃん
ってなったり。
立夏ちゃんまで
おーかしーい
って抱きついてくる!
ん?
立夏ちゃんはまさに当事者になることが多くて
笑ってる場合じゃないような?
今日もおやつを取り合ってたし
勝つまでかけっこしてたし
氷柱ちゃんと服のサイズが合う会わないで取り合いっこしてたの。
でも蛍は
今度はこっちからそっと抱き寄せて
もうもう
なんとしょうがない立夏ちゃん!
って、なでなでする。
立夏ちゃんもそのときだけは気持ち良さそうに大人しくするの。
こんなに心休まる時間がとれるなんて、そうぞうしいお昼には考えられなかったね。
ただ、それどころじゃなかっただけ?
普通に遊んでいる時だって
歌ったりするみたいになって
よく聞いていたら本当に歌っている日常。
お休みなんだからそれでいいか。
いいお天気が続いて気分も良かったものね!
かえって来た星花ちゃん探検隊が
報告もそこそこに歌に加わっていたから
何がなんだかよくわからなかったけど
今日は特に何もなかっただけで
そのあたりの近所の子が出てきたから遊んだという話が
わざわざあんなに歌を交えないと続かないものなのだろうか!
蛍の隣で、氷柱ちゃんが深く疑問を感じているようす。
そして蛍も
まあ少々の疑問は
ひとつまみの量ならあったような気もするけれど
まあそういう時もあるし
いいんじゃないかな?
などと話して
氷柱ちゃんに曖昧な同意をもらったのでした。
あんまり納得してなかった……?
謎の公園は、だいぶ複雑な道のりで再びたどりつくのも大変そうだけど
連休があると、近くのおじいちゃんおばあちゃんのおうちに遊びに来ている子供が集まるので
地元からしてみればぱっと見さまざまな怪現象が起こるという
今日はそういう発見があったみたいですよ。
せっかくできたお友達とは、またいずれ長いお休みがあるまでのお別れ。
これもほろ苦い秋の味付け?
短いような気もする連休だったけど
きっとたくましく育った子も多いみたいだな、
という蛍の意見。
明日からもみんなを見守りながら
あふれる元気をもらってそっと支えていけたらいい、
と主張してみたものの
蛍もわりと元気なほうだというのが海晴お姉ちゃんたちの意見なの。
そうなのかな?
謎を解くには明日からはじまる学校の日々の
新しく訪れるおそらくは忙しい生活を
ちょっと秋らしい落ち着きを求めつつも
蛍も駆け抜けていくくらいのつもりで
飛び込みます。
やけにはしゃいでいても
そういうものだと思って
お兄ちゃんはぜひ、勢いをつけて飛び込む蛍がいたら受け止めてくれるとうれしいです!