吹雪

『ブックスペース』
星花姉の探索はまだ途中らしいので
今日はそれとは関係ない話をします。
数日前から暇を見つけてヒカル姉が作ってくれていた本棚が完成しました。
ヒカル姉はネジが苦手とのことで、はめこみ式。
組み合わせるときにうまく形が合わない箇所もあって
思いっきり力をこめてしまっても壊れないのだろうか?
相談しながらの作業でした。
もしかしたら、ひび割れてしまう可能性は
作業中には常に付きまとっていたから
決断の前にはよく調べてから。
溝の細かいサイズまで測っておくほうが失敗は少なくなると考えましたが
それをしていたらいつまでたっても終わらないというヒカル姉の意見を聞いて
いざという時に接着剤で修理ができそうなら実行。
もし危うい場合は……
もともと、ホームセンターの小さい本棚は組み立てる際に
力が必要になるものが多いからと
ヒカル姉が部品の数も何も確認しないままどんどん進めようとしているから
そういうものなのだろうか?
意外と作り手に多くをゆだねる形で店頭に並んでいることもあるのだろうか。
ヒカル姉の意見が正しいとは限らないかもしれないし
私はだいぶ疑問も感じたのだけど……
経験を重ねた作り手の意見は参考になる場合もある。
しかも、私一人だけではたぶん完成はずっと遠くなるはずで
なるべく休日のうちに終わらせておきたい。
棚の組み立てが完了しても、まだそこに本を並べる作業にも時間がほしいから。
冷静に見て成功の保証が何もない作業が続く様子を
はらはらしながら見ていました。
本当は、日常生活に必要量をこんなに超えて
呼吸にエネルギーを使う理由もないはずなのに。
横で見ているだけで、軽く汗ばんだヒカル姉と同じように休憩を重ねて
充分なカロリーを摂取しながら設計図を確認する作業。
どうにか無事に連休をあと一日残して完成までたどりついて
それにしても予定とは
なかなかうまくいかないものなのだなあ……
と、やはり体もそんなに動かしていないのに熱が上がったような感覚を意識しながら。
このように設計図にない作業を自発的に繰り返す場合
失敗することも多いのでは?
もちろんどのような時でも失敗のリスクをゼロにすることはできないのは確かですが。
ヒカル姉は、もちろん失敗することもあるという。
わりと高い確率で起こることのように話していました。
もし、そうなったら?
あきらめる。
切り替える。
よくあることなので
気にしない。
といったことが大事なのだそうです。
これからは本棚の組み立てが必要になったら
もう少し時間の余裕を多めに見積もっておくか
いざというときの心構えを初めからする、などの準備が必要になるかもしれない。
どちらもなかなか難しいことです。
いずれ自分の作業環境に好ましい変化が起こるよう期待をして
ある程度の時間の経過を待つことにしましょう。
もともと地下室にある書庫はほこりっぽくてあまり良い環境ではないから
容易な手順で近くに収納場所が増えればいいと考えただけ。
組み立てるだけなら手間はかからないと思ったのに
何事も経験してみなければわからないことは多いようです。
それは確かに年齢にあわせて
収納場所が足りなくてそこらじゅうに転がっている服が多くなる傾向にあるのも理解できます。
整理整頓が困難になったら
あきらめる。
私も努力してみます。
ともかく、今回は本棚も無事に完成し
私たちの胸の高さほどもない簡易なものに見えても
並べていけばずいぶんはかどって
楽しいものですね。
本を何もかもなんて手の届く場所に置いておくこともできないから
あと一日で形をつけて終えられるように。
目的は収納それ自体ではなくて
これから読みやすいように。
必要なときに少ない手間で取り出せたらいいというそれだけ。
完全にうまく分類されている必要はない。
片付けのために本棚を作り出すのはどうやら本末転倒だし……
同じだけの労力を整頓のために使うのも適当とはいえない。
当然このようにして
優先して手元に置いておきたい本と、それほどでもない本を分類するためには
途中で読みふけってしまい、本棚が意味を成さない状態を通過することだって
充分に考えられたわけで
これも事前に計画しておいた誤差の範囲ととらえるか
あるいは、やはりもう……
いえ、あきらめるまえにできることをするのも一つの手なので
星花姉と、夕凪姉もいる三人で共有する部屋の片隅で
山積みになっているおそらく必要な本と、そこまで必要ではないかもしれない本に囲まれて
明日いっぱいではとうてい片付けが完了する気配が考えられない状況でも
まあ……
心の準備だけはしておきます。