『夜の季節』
暑さは今日も変わらず続き
まるでこのまま永遠に
悠久の宇宙が息絶えるときまで変わらないまま
われわれはまぶしい天体に照らされ続け
やまない苦痛と
冷たいアイスと
たまに水しぶきが降り注ぐビニールプールに
ああ、あしたこそは水ようかんの日であればと静かに願い
このまま日々を続けていくのだろうという気がしてくるほどなのだが
それでも季節が過ぎれば夏は終わり
短い人間の一生から見たら果てしない時間を経て、
あの大きな太陽さえ眠るときを迎えて
想像を絶する遠い未来には、熱的死を迎えた宇宙の終わりに
冷たく音もない事象の地平面。
静かなその地に立つ者は、耐えられそうもない夏の暑さすらも幻として思い出すのだろう。
そういうわけで毎日毎日
まったくいつまでも暑い。
今日は夕方に突然の雨。
少しは涼しくなったような感覚もあり
さっと湿度を上げて去っていった雨が
いたずらにあたりをむしむしさせただけのようでもあり
実に、これだから夏は油断がならない。
だいたい何だろう、あの夕立という突然の現象は。
驚かせるものだ。
前触れもなく天が割れるような音でとどろき
かっと光が大地を射ると
たちまち音を立てて地を叩く大粒の雨。
急いで室内に逃げたはずなのに
転びそうな妹たちに手を伸ばしたり抱きかかえたり
ただ単に慌てたり、なんだか楽しそうにはしゃいだりしているうちに
うちの子は、足の速さにかかわらず一人残らず雨に打たれ
洗いたての服は一着も無事ではすまない。
自然現象は人の意思を超えているにしたって、夏の雨とは猛烈なもの。
やがて静かな終末を例外なく受け入れる私たちのもとにも
こんな嵐も訪れるんだな。
それは人がただ自然のままに任せたら
ぎらぎらの輝きがいつまでも衰えを見せないままでどうなっているのか、と
そんな夏だってやってくることはあるんだろうな……
日陰やクーラーのもとで休めるこの地に生まれたことは
私にとっては宿命的なことだと言えるだろう。
そうか……愛するものの元へ絆を結んだ運命はこの私を
今日は涼しく快適なクーラーの部屋へと運んだのだな。
どうにもならない自然に身を任せながら
あるときは夏の暑さを疑問に思い
またあるときは落ち着いた部屋でオマエと過ごす。
終焉まで変転を繰り返す定めというのも
よくできている、と言っていいのかな……
まあいいか。
ともかく暑さは何とかしてやりすごさなければならないものなんだし。
クーラーに当たり過ぎないように温度は控えめに
なにしろ毎日部屋で過ごすんだし。
うん……
海晴姉や春風や蛍に見つかると怒られるから
そこは、なんとか一日中とは周りに感じさせない努力をしつつ
あまりに大変な暑さは
まるごと受け入れるには少々過激すぎる。
うまいこと工夫を考えながら夏休みを楽しんでいきたいな。
そこで最近、話題に上がっているのが
寝苦しい夏の夜を
みんなで快適に過ごすための伝統。
花火?
もちろん、それもあるが。
ほら、
濡れたこんにゃくを紐で吊るして
首筋に当てるタイプと
ろうそくを一本一本吹き消して、
というタイプと、いろいろあるだろう?
いや、もちろん花火のことではなく。
先が見えない夜の闇に
背筋からぞくぞく冷える体温。
錯覚なのか、実際効くのか知らなくても
夏の醍醐味!
とは、意見が一致しつつも
それぞれの希望があんがい分かれているようでもある。
そうだな。
夏はまだ長いのだし
ゆっくり話し合ってからでもいいかもしれない。
やがて訪れるであろうイベントを楽しみに。
なにしろ今は夏休み。
宿題もまだ急いで進める必要もない時期。
まだのんびり先の予定を立てるのだってかまわない。
と、このあたりも同じ家のきょうだいでありながら
いろいろ意見は分かれるようだがな。
そのさまざまな自由を体験する様を、間近で眺めていられるのもまた
大家族に生まれた私たちの特権であり、記憶を残したい思い出の一つ。
膨張する宇宙のエネルギーのように
この家は暑さの中でもさわがしさが満ちているな。