真璃

ラブリーデイズ』
今夜はどうにか
うすぐもりだけどぼんやりお月様が出て
観月は月見酒。
お酒は、実はおちょこだけ。
気分だけで中身はお水。
マリーももらって飲んでみたけど
本当にお水。
気分になるの?
陽気でうかれて。
お布団にはいらないで
おちょこを抱いて眠っちゃった。
もう!
観月は重いのに!
もうだいぶお姉ちゃんなのに、はずかしいの!
ねえフェルゼン!
あのねえフェルゼン!
マリーがお呼びよ!
あなたのいとしいマリーが
こまって声を枯らして、助けを求めている!
観月をお布団に運んであげてね。
夜になると、少しだけ肌寒い感じ。
お布団にもぐると暑いかなって思うけど
めくると寒いかな、
むずかしい気温。
夕方から湿った風が吹いたものね。
雲がそんなに厚くないのはよかったの。
観月もお月様が出たくらいで
うかれてよろこんじゃって
たぬきみたいね?
おなかをたたいて鳴らしながらおどる?
うたって──
お月様のうた。
きれいだな、
ちょっとゆかいになるね、
おちょこで
そんな気分。
いいわね!
子供ったら悩みがなくって!
眠る前に見た月がきれいだったら
それだけで
一日はすてき。
まちがいなく、あしたもいい日になる!
疑いもしないなんて。
おかしいの!
マリーは
朝、目が覚めた時に晴れてるほうがうれしいけどな。
いい日になる予感が
びんびんにするでしょ?
いい感じ
しまくるでしょ?
目覚ましの湯気が立つメニューに
ティーカップにそそいでもらったら
気分が出るって
思うけどなあ……
明日のお天気は変わりやすいそう。
マリー、気持ちのいい朝を迎えられるかしら?
はれて!
くもって!
雨が降ったら
地上の人も落ち着かない。
そんなおおあわて
しそうな、
しまくりそうな明日──
女王に生まれた女の子は
落ち着かない日はお好きではないわ!
フェルゼン、
フェルゼーン!
いちだいじなの!
マリー、お願いがあって呼んだの。
ほろ酔い気分になった観月が眠ったから
子供部屋には、もうあなたと二人だけ。
おじゃまなちびちゃんたちはすっかり夢の中。
誰の夢を見て
寝顔は、こんなにうれしそう?
だけどね、
現実のフェルゼンは
マリーの独占。
このすてきな
いちばんのレディーの言葉だけをきいてくれる。
おねがい!
そりゃあね、
マリーだってすっきりしないお天気よりは
晴れるほうがいいわよ。
でも、大地とともに堅実に生きる人間たちには
さすがにお天気は
どうにかするのはむずかしい。
夕凪ちゃんのマホウも効果があったりなかったりだし
宮廷魔法使いには
まだまだ修行不足!
そこで、フェルゼンにおはなしがあります。
マリーから
こっそり……
ささやきで届ける気持ち。
あのね。
明日もマリーは
フェルゼンと笑顔でいられる
いい日を迎えたい。
別に、一日ずっとにこにこばっかりしていなくたっていいの。
きっと小さい子たちが大騒ぎして
大変な時間もあるだろうし
マリーもいつだって泣かないとは限らないし……
だけど、ここはひとつ
暗号みたいに二人だけのひみつで
そっと笑顔を交し合えたら
どうかしら!
それだけで、ゆううつなお天気も
いい日になりそうな気がしない?
誰もが少しみがまえる
ぽつぽつ雨。
傘を持ち歩かないといけなくたって
二人がそっと
お互いの気持ちを分け合えたら。
いい日になりますように
願いを込めたと伝わるなら
それはマリーにとって
ちょっと重たい雨にならないかな?
そんな気分にまでなってしまう
うかれがちな……
まあ、雨の日は浮かれすぎたらいけないか。
すべるし。
そういわけだから
暖かな部屋で
お互いの気持ちを、一瞬分け合う約束
しましょう!
楽しみだな──
もちろんフェルゼンは
マリーと秘密の約束をするのが大好きなのよね。