『終業式』
この一年の締めくくり。
体をこわすこともなく
がんばって通った学校の毎日。
今日からは、少しお休み。
家でゆっくり
次の学年が来るのを待つ時間です。
ふと振り返ると──
小雨は、
いつも泣いていたような記憶ばっかりだけど。
どうにか一年を乗り切って
大変だったことがあったらその分
たぶん成長している。
と、思えたらいいんだけど
よくわかりません。
でも、どうしてももうだめだと思うようなことだって
いっぱいあったのに。
大切なお友達を泣かせてしまった日も。
忘れないように何度も確認したはずの荷物を
なぜか最終的には家に置き忘れていた日も。
何もないところで転んで汚した新しい服。
汚すものほどこぼしやすい給食の時間だとか。
こんな小雨は
たぶんそのうち
みんなからあきれられて
誰にも気づかれないうちに
消えていなくなってしまうんだろうか……
きっとそうなるだろうと覚悟していたけれど。
今日はカバンに
体育以外はよくできましたの通知表を持って帰ることができました。
お兄ちゃんに見てもらって
喜んでもらえてよかった。
小雨、がんばったのかな?
先生からの言葉も
一年でだんだん
積極的になって
お友達の信頼もあるようです。
これから最上級生になれば
ますます活躍が広がっていくと
先生は信じています、
なんだそうです。
本当に小雨の通知表?
いつも図書館にいて
お話があまり得意じゃない
大人しい子。
の、はずだったのに。
同じクラスのあまり話をしたことがない子といると
あわててしまって
慰めてもらってばかり。
申し訳なくなってしまう。
だけど
お友達になれたら
うれしいんですって。
みんなが言ってくれるの。
気になっていたんだと。
仲良くなりたかったんだと。
新しいお友達が増えて
今までよく知らなかった人と親しくなるのは
うれしいことなんだから。
手をとってくれたの。
小雨は怖がりだから
知らない人といるのも、おっかなびっくりで。
だけど、信じてもいいもので
すぐ見捨てられたりなんてことはない、
少し勇気を出してみたら
いつも優しくしてくれる人がいると。
小雨はいつも、お兄ちゃんに教えてもらっているから。
ずっと見ている。
気にしている。
そっとそばにきて
普段どおりのあいさつと、おはなし。
小雨がそわそわしていたって
お兄ちゃんはほほえんで待っている。
おうちでいつも会える優しい笑顔を
小雨は今、信じている。
出会った日からずっとそうだったと
後から気がつくんです。
新しい始まりの季節が来ると
お兄ちゃんとの思い出が、最初は
桜の咲く頃に始まったわけではないのが
なんだか不思議なほど
小雨にとっては特別な出会い。
ちょうど一年前、五年生のはじめの時にクラス替えをして
次の六年生に進んでも変更はないので。
これからも一緒にいられるお友達と
また、始業式で元気に会おうとか
その前に会って遊ぼうとか
約束して。
手を振ってまたね、と別れたら
胸がぽっかり、少しさみしい
桜のつぼみが開き始めた帰り道。
心の小さな穴を吹いていく風は冷たいけど
この寒さももうすぐ終わりだっていう
お天気予報の笑顔。
それまで、寒すぎてしまわないよう気をつけるのが
今の小雨の大事な仕事。
さびしいなんて言ってばかりではいけません!
小さな子達を見ていてあげたり
同じ部屋の立夏ちゃんを見ていてあげたり
それからたぶん
麗ちゃんはしっかりしているから
小雨の至らないところを
的確に指摘してくれたり……
家族に助けてもらう場面が多くなりそうな予感もします。
こうして春は近づいていて
お休みの間に新生活の準備をしなさいって
しだいに暖かくなる毎日はせかすと思うから。
小雨はおろおろ慌てたりしながら
お兄ちゃんに見守られて。
いつのまにか自分で気づかないうちに
少しだけでも成長していけたなら
いいな──
小さな野望を胸に
春休みを迎えました。
小雨が妙に張り切って
また失敗して迷惑をかけてしまったら
ごめんなさい……
小雨はがんばります。