海晴

『三月』
三月のはじまりは
天気図の様子も、どうやら春まだ遠く
予報では、雨と雪のマークが日本列島を覆う。
まだもう少し
おうちの中であったかく。
小さい子たちも
うがい、てあらいをちゃーんとしたら
てがつめたーい!
私たちの膝に乗って
日ごと重くなる体ごと、あたためてもらうとするあたりまではいいんだけど。
ぽっかぽかしてきたら
もう、じっとしていられなくて
同じ背丈の子供同士でじゃれあって
からまってころがって
大はしゃぎで
元気にプロレスごっこ
組み付いたら
なげとばしてしまう!
ぬいぐるみとかを。
高まったテンションのままで
ジュースをもらうから
やっぱり、ひっくりかえしてしまうし
みんながいてくれるお休みがうれしいのはわかるけど
こらー!
気をつけないと
あぶないでしょ!
のどが痛いのは、暖房で乾燥しすぎた部屋のせいだけではない気がするわ。
家族が残らず揃って
暖かなリビングに集まるんだから
そりゃあ、一騒動あるかもしれないって覚悟していたけど。
まさか、お出かけしていなくなった人の話題で
いっぱいになるなんて
昨日の春風ちゃんの予告の通りというのか……
お米が少なくなってきたことが話題になると
我が家で唯一の男手!
霙ちゃんに調子に乗せられて張り切ってしまったキミが
雨が降らないうちなら大丈夫かな、と
お昼ごはんの後で
小さな妹たちに見送られながら、お買い物に出かけて。
たまたまその場にいなかったヒカルちゃんが
後から話を聞いて
だったら重い荷物だし
追いかけて、助けてやろう!
もともとは、今日はそこまで荷物を買い込む話ではなかったはずなんだけど
ヒカルちゃんが早合点して
止めるまもなく人助けのためにサンダーバードみたいに緊急出動して行ったさらにその後で
やっとお昼の片付けを丁寧に済ませた春風ちゃんが
な、
なんですってー!
とてもさっきまでおしとやかで家庭的だったとは思えない声で叫んだら
だってもうすぐ雨粒が落ちてきそうな空模様、
いくらすぐ帰るつもりだからって
傘も持たずに!
これは届けてあげなくちゃ、
きっと王子様は春風を待っているわ、
慌てて部屋に飛び込んだらデートみたいなおしゃれな服に着替えて出てきて
雨が降りそうなのにそれで行くの?
声をかけるのもはばかられる浮かれようのまま
王子様の役に立てるなんて
しあわせですー!
行ってきますも忘れてそんな意味の超音波を残していくし
残されたみんなも
黙り込みがちに聞いている秒針の音の合間に
なんだか後からだんだん不安になってきたのかのように
今から様子を見に行こうか?
ささやいている。
雨が降りそうで、寒い日だったもんね。
別に、ヒカルちゃんのうっかり加減と
春風ちゃんの何をするのかわからないラブオーラが不安になったということもないと思うけど。
結局、星花ちゃんと夕凪ちゃんが申し出てくれて
心当たりを回ってきます!
お任せすることになった事情は
キミの知らない一幕、
いったい、あの話し合いは
深刻なのか、二人のまじめな顔がかわいらしいところなのか
あまり幼稚園の子まで行こうとしても
二次遭難したらいけないし。
そもそも遭難したわけではないんだけど……
というか、まだ帰ってくる予定の時間ではないし
心配する理由さえ何もないはずなんだけど
そうね、
朝の天気予報で見た、等圧線の込み合った天気図が
いつ激しく降り出すかもしれないって思わせたんだと
そういうことにしておきましょう。
ちびちゃんたちがあわててしまうほど
もう少しくらいしっかりしたほうがいいかなっていうお姉さんたちの姿は
だって、今日は日曜日なんだから
たまには、いつも張り詰めた気持ちを家族の前では休めることがあっても。
ここでお姉ちゃんが見ているから大丈夫。
もし何かあったときは
信頼して任せておいてくれても
たぶん、キミが考えている以上に
大家族の長女は頼りになるはず。
それにしても
いなくても話題の中心で
みんなが探しに行きたくて、うずうずしっぱなし。
とっても愛されているんだね。
すぐそばにいるやさしいお姉ちゃんに気づかない妹たちに
もう!
私だって
弟クンのことを誰より思っているんだから。
今すぐみんなをまとめて
飛び出して生きたいのを抑えるだけで
大変なのに。
これから絶対、愛情表現
負けたくないな、と
思いました!
また次のお休みまでに
今度は私だけが
誰よりもキミのそばにいる方法、
探しておかなくちゃね。