観月

『バナナ』
今日のおやつは
バナナ。
きいろくって
甘いにおいで
やわらかで
こどもたちみんな好きなバナナ。
うれしくって
バナナが好き!
と言いたくて
小さい子も、お姉さんも
バナナだ!
うれしー!
うっきっきー!
おさるのまねをする
バナナがおやつの日。
そして
落ち着いて食べなさい!
マリー姉じゃが立派なところを見せて
小さい子たちも
はーい!
すなおな
バナナがおやつの日。
今日も騒々しい午後三時であった。
小学校の姉じゃたちも帰って来る頃。
吹雪姉じゃ、ユキ姉じゃ
まだじょうずに皮をむけない
さくらや虹子に
手助けをしてやってくれ!
おいしい果実が
もう、力を入れたらつぶしてしまいそうなほどぎゅうっと
手のひらの中にあるのに
なかなかじょうずにむけないと
あせってしまって
青空も横に並んで、
こうするの!
皮のはしっぽをいっしょうけんめいひっぱってしまうし
バナナが折れてしまったら
うわーん!
バナナが!
小さい子らは泣き出してしまう。
よしよし。
おいしいバナナはまだまだあるから
泣かぬように。
良い子にして、仲良くおやつを食べような。
遠目に見守るおひなさまも
いつものやさしいお顔も
今日は、どこか今まで以上に
ほほえんでしまうよう。
兄じゃもバナナのおやつは好きであろうか?
雛祭りケーキの候補にも
今日は名前が挙がったバナナ。
栄養満点。
小さい体に詰めたバナナパワーで
ケーキのメレンゲをつくるおてつだい。
じょうずにかきまぜられるぞ。
兄じゃもバナナが好きであるなら
この子らを守る力が輝いて見えるであろうか。
食卓のバナナにゆらめいている
力を持つ精の姿は
青空のおさる踊りにつられて動く
日光東照宮のおもしろい三猿にも似たようなものたち、
である日や……
バナナのふるさと、南の島で
真っ赤な花をうれしそうに髪に飾り
揺れる踊りにゆっくりと歩を進めて。
あるいは、八百屋の奥さんに似て
大柄な体格をした神様が
元気な子を育てるなら
まかせておいで!
とばかりに、まるいおなかをたたいたり。
雛祭りの日には
バナナケーキができたら、どのような力が踊っているのか。
その日に我が家を満たす春の光は
いかなる色に広がっていくのか──
せっかくのお雛様が
これからの一年を守る一番の輝きを見せてくれたらいいのだが
今はまだ、強い力も眠りにまどろんでいるような
のどかなお顔のお雛様たち。
かわいい、かわいいと
家族みんなが喜んでいるが
祝祭の日を任せるにはおうちのお人形は少々頼りないような?
その日になったら
もう少し目元もぱっちりするであろうか?
これからしばらく兄じゃと
毎日いつも様子を眺めて行きたいものじゃ。
蛍姉じゃのお使いに着いて行って
雛祭りの準備に、お花屋さんにたずねて
桃の花の様子を尋ねたときには
まだつぼみも多い枝に
あさひみたいな小さい子がすやすや気持ち良さそうに日を浴びているし
本当にもうすぐ雛祭りが来るのであろうか?
まだまだのんびりとした、二月の終わり。
お天気もまた来た風が強い寒い日が続きそうだというし
春を実感する三月も、まだまだ遠いことのように思えるのじゃ。