海晴

『ウォーキートーキー』
年が明けて少し経ち
まだ2015年の日付に慣れない私も
すっかり日常に戻り、
鏡開きのおしるこを食べたら
ああ、これでもう
お正月の雰囲気も
きれいさっぱり去っていく。
小さい子たちは
どうして鏡?
おもちは
おしゃれなの?
不思議そうだけど
面白いことを考えるね。
というか
答えるのが難しいことを言うね。
私はというと
お正月の間
あんなに一緒だったおもちとのお別れが
名残惜しいというのに
霙ちゃんが先に
ああ……
おもちよ!
美しいあんこよ。
私は忘れない、健やかに過ごしたお正月を。
家族との時間を共に過ごしてくれたおまえたちを。
なんだか悲劇の主人公が
そういう時に歌い出すみたいに嘆くものだから
長女に生まれた自覚を胸に
みんなの見本となって
明るい未来を見つめて進む姿を見せたいお姉さんとしては
そうよね!
ずーっと一年中
もちもちおもちを食べていたい、
離れられない!
とは
ちょっと言いにくい。
おもちよ
また来年、
あんこの甘さは
ひとときお別れの涙が隠し味、
なんて歌い出したら
小さい子が真似をしてしまう。
せっかくこれから新しい一年に歩みだしていくのに
いつまでもおもちでは!
新しい年はこれからなの。
一年はりきっていこうね!
そんな笑顔を見せたいのに
霙ちゃんの気持ちもちょっとわかる
センチメンタルに、過ぎ去る行事に身を浸して。
来年の今頃は
成人式の準備をしている年頃だって言うのに
まだおもちに未練があるこども。
大人になる一年先は遠い未来。
思い出すと
よだれも出るほど!
ああ、お正月の味よ。
でもまあ
いつまでもお正月と言うわけにもいかないので
明日は成人式のお兄さんお姉さんたち
テレビの中からお祝いの言葉を
素敵な成人になって
これからも、私たちの憧れになってください。
私たちもすぐに追いつきます!
ああ、でも
忙しい成人式の朝にお天気予報を見ている余裕は
あまりなさそうな……
いやいや、こういう日にこそいつも通りの日常で
安心してもらえるなら。
やっぱり大人のお兄さんお姉さんになっても
緊張してしまうのでしょうか。
安心した気持ちを取り戻してもらえる
定番の時間に
私のお天気予報はなれているでしょうか?
おもちも恋しい
悲劇のヒロインごっこもする
実は、こたつにごろごろしっぱなしのひとつ下の妹を引きずり出すときも
私だって
ぬくぬくしたいときはあるよー、
なんとなくつまらないなって思う
まだ成人にはほど遠い
揺れる気持ちの女の子。
でもやっぱり
お姉ちゃんが
しっかりしないとね!
その分いいこと
いっぱいあるもんね!
霙ちゃんは知らないの。
私のふだん過ごしている日常、
たまに動揺もトラブルもあっても
いつも戻っていけると信じている
大切な──
私を安心させてくれるもの。
これまでも、これからも
ずっと好きでいられる。
たぶん私に何があっても
同じ気持ちでいてくれると思う。
落ち込んで暗い顔でも
すねているところを見せてしまっても
私がいつも帰っていく場所。
それが何なのか
キミだけは知っている。
もしかしたら、私よりもよく知っているかもしれないし
どれだけ素敵なものなのか
キミもまだ気づいていないことを、私のほうがよくわかっている場所もあるかも?
もし、そうだったら
教えて上げられたらちょっとうれしい。
私を元気にする力を。
前向きな気持ちにしてくれる
特別な毎日を
私はこれからも変わらずに過ごしていくよ。
そうして、たまには
キミが気づいていない、
隣を歩いたり話したりしていると見つける
私の大好きなこと。
教えてあげるときもあるかもしれないよ。
これからもずっと
私が飛び込んでいくと決めた場所は
今年一年も
これからもいつまでも
私を幸せにしてくれる。
キミも知っているはず。
私もいつもそれを教えてあげたい。
本当はキミも
いつも同じ気持ちでいてくれるように
願っていることも
いつも隣にいてくれるキミに
ちゃんと話してあげます。