『みつけます』
そろそろかな、
まだそれほどでもないかな、
もうだいぶかな、
と、ぼんやりしているうちに
ついについに
本格的な冬の寒さが
ものすごい勢いで押し寄せてきました。
蛍たちの周りを
包み込んでいます。
寒くなってきたのは
知っていたけれど。
わあー、
秋も深まって
冬みたいだな、
あんまりやせている氷柱ちゃんくらいの子は
つらそうだな、
太らせよう!
もしかしたら
蛍はみんなを
食べるつもりなんじゃ?
うたがわれそうになるくらい
おいしいものを
食欲がそそるよう。
暖かそうなテーブルのまわりに
うれしいえがお
見つけよう。
そうして、備えるの。
蛍がいるこの家なら
ちょっとだけ
他の場所より落ち着いて
あたたまれると
寒くなり始めた今のうちから
からだ全部で理解するくらい
知っていてほしいよ。
寒さを増して近づいている
今度の冬のために。
くらいのつもりだったのに。
日に日に
猛烈なペースで
気温は目に見えて下がってきています。
天気予報の予想気温も
まいにち
さんども
よんども
きのうより
さがってる!
冬のまっただなかになったら
いったい何度になるんだろう。
鼻水がこおる?
冗談を言ってるヒマもないかもしれないほど
どうやらもう
寒波の影響が強いあたりは
寒くて大変らしくて
テレビの向こうに立つ立つ海晴お姉ちゃんも心配している
あまりにもとつぜんで
蛍が驚いている間もない
かなりいきなりの
冬のはじまり。
蛍とお兄ちゃんとみんなが住むこの町も
あっという間なんです。
気がついたら
冬の気温なんです!
冬至っていつだっけ……
もう今から
ゆずゆであったまりたいくらい。
これから厳しい冬を迎える前の
備えの行事が
まだ来てないのに!
おうちのドアを
冬の気配が叩いたな、と思ったら
どこどこどんどん
遠慮なく大きな音で合図して
お出迎えしたらものすごいはやさで上がりこんできた
猫みたいな走力の冬将軍は
みんなが集まるこたつの真ん中に
当たり前のような顔であくびしながら
すっかり落ち着く定位置を見つけ出して
ちっちゃいこがむいてくれるみかんを
あーんって
食べさせてもらったりするくらい
気がついたら
私たちの近くに馴染んでいたんです。
そんな和むものじゃないけど……
とにかく本物の寒さは
すっかり来ていたの!
いつのまに……
一月中旬並みの気温だって!
ふええ……
まじやばい……
あっ、驚いたからって
こんなに言葉が乱れると
お兄ちゃんの前でよくできた妹のような顔なんてできません!
もともとそこまではよくできた妹でもないですけど
たまには気取って
そうだったらな、って
まねてみて、
というか
苦心しながら
無理かもしれないとあきらめかけながら
そんな理想の娘さんになった蛍が
お兄ちゃんの隣に寄り添っている日を
夢見て
目指しているので!
お兄ちゃんの自慢の妹になるまで
それまでずっと。
なので
気を取り直して。
どうやら
大変な寒さみたいなんです。
みたいっていうか
明らかに
すぐわかるくらい
大変な寒さなんです。
お兄ちゃん、
寒くて寒くてつらかったら
すぐに言ってね。
なんでもしてあげたくて
走っていきます!
この時期はなべつかみなどを
あわてて外しながら
急いで暖めに行くので
あたためたい一番槍の春風ちゃんより
ぜったい早くお兄ちゃんのもとへ駆けつけなきゃ。
対抗意識が生まれる
ライバル関係なんですよ。
そんな話をよくしているんです。
家族が寒そうだったら
急激に押し寄せた冬だもの、
私たちにできることを
なんでもしたいんです。
待っているのがお兄ちゃんだったら
蛍も止まらないもの。
春風ちゃんも
止まらないんだって。
きっと蛍のほうが
先に駆けつけますね。
すぐに!
今年はインフルエンザの流行も早いんだそうです。
気をつけてほしくて
蛍はお兄ちゃんが寒さに震えていないか
いつも気になるので
魔法で小さくして
ポケットに入れて
持ち運んで
ずっとお世話をして
あたたかくさせてあげたい!
と思うのだけど
やっぱりそれは
お兄ちゃんもちょっと困ってしまうかな、
と思うので
結婚してからにしますね。
今年の冬はまだ
ういういしい
蛍とお兄ちゃん。
だけど
お互いを思い合うことでは
世界で一番強い絆で結ばれた
仲のいいきょうだいの
そのうちの
特に蛍が気にしてしまいがちな
ふたりです。
お兄ちゃんのために
何かできたら、
いつも目を光らせていて
ときどきは
蛍でも、できること
見つけられるかも!
喜んでもらえるかも……
遠慮なく言ってください。
お兄ちゃんには、いつも蛍がいるんです。