立夏

『ランドセル』
おうちのすみにある
押入れから。
庭のはしっこ
物置から。
でてくる
でてくる
ざくざく。
きんぎん
こばん?
それとも
がらくた?
もってきちゃって
おこられる!
本当は
役に立つもの
探していたはずなのにね。
本格的な冬じたくに
ふゆものと
ストーブと
あとついでに
そのうち大掃除の時に
ものをしまうすきまをつくっておいて
寒い冬に
遊べる楽しい何か
見つかるなら
もっといい!
もう、
はだかになって走り回るだけで
おもしろかった
あの真夏は過ぎてしまったの。
ああ!
あいしゅうの
秋が深まり
とおりすぎていくと
いよいよ季節は冬になる。
ひゃー!
いいね!
楽しいこといっぱいありそうな
冬だね!
でも、おうちの中で
寒さをしのぐ時間が増えると
ごろごろしてるリカをおきざりにして
オニーチャンは
しずかにごほんを読んでいる
深窓の
おとめのほうに
相手をしてあげようと行ってしまう。
うわきもの!
リカだって
おへそをまるだしにして
はなちょうちんで寝ているときでなければ
おとめだもん!
シャイニー
スマイル
ばくはつ!
ほらね。
リカがわらった
そのしゅんかん。
せかいはたちまち
花が開いて
かがやいて
ときめくんだもの。
さむくても
げんきな
なまあし女子。
木枯らしのなかを駆けぬける。
そういうわけで
家族のために
げんきをふるぱわーで
探してきたよ。
冬のおてつだいをするリカがいるよ。
見つけた、
これは
ランドセル!
リカは
ほんの一年前までは
黄色いおぼうしの
しょうがくせい。
りっぱな風の子だったよ。
冬でもはだかで駆け回ってたっけ。
お風呂上りだけど。
あの頃を考えると
ずいぶん立派になったなあ……
どことなく
セクシーになったなあ……
と、思うでしょ?
そう思わないようなら
リカのこと
ちゃんと見ていないしょうこ!
ばつとして
まいにちリカひとりだけと交換日記を
特別にしよーよ!
ゆめのあるはなし。
冬の夜更けに
ひとりきり日記帳を広げながら
テーブルのあかりだけをたよりに
思いかえす
あのひとのかお。
今日一日だけで
どれだけいっぱい
リカのまえで
きらきら
くるくる
生まれてきた今日までを
たった一日分に詰め込んだような
ぜんぶの表情を
惜しみなく見せてくれたのだろう?
たったひとり
この世でYOUが
いちばんあいする
リカだけに。
もちろんオニーチャンも
思い出せなくなるくらいの数を
あつめたに違いない。
リカのおかお。
それともぜんぶ
おぼえていて
絶対に忘れないかなあ?
リカにはむりだ!
だから
あしたもいっぱい
見せてね!
オニーチャンのなにもかも。
かくさずに。
リカがしらないこと、
やっぱりランドセルが似合っていた頃の
その時の無邪気な
きっとかわいかったはずのかお。
あー、
もったいない!
おうちにかえるぬけみちも
あなばのこうえんも
いそいでかけぬけてしまう
かえりみちのたのしみも
まいにちいっぱい
二人でさがせたかもしれないのにな。
リカが元気だったくらい
やんちゃなこぞうだったのかな?
おしえてね、
その時の
まだリカがしらないこと。
そうだ、
寒くておうちにいるあいだ
くっつきあって
話してもらえばいいんじゃない?
むじゃきだった頃のこと。
だれかに泣かされた?
いまでもゆるせないいたずらがあったら
リカが怒りに行ってあげる!
こらー!
オニーチャンは
リカのせかいいち愛する人なんだぞ!
って。
まだやっちゃった
あんなことを忘れられないなら
思い出したことぜんぶ
リカがゆるします!
だからリカがしたことも
ゆるしてね。
まいにち
やらかして
めいわくおかけします!
はんせい
してるよ?
ほんとだってば。
みつけたランドセルの
意外な思い出話。
着替えはまだ見つからないけど
いいこといっぱいみつけてもちかえったよ。
まだまだ眠っているかもしれない
おたからを探しに
ものおきにでも
どこにでも
手を引っ張って
ごういんにつれてきてしまう
いつもいてほしい
だいすきなひと。
リカの家族。
ふゆじたくも
おおそうじも
てつだってもらえるんだ!
やったー!
いっしょだよ。
なにをしていても
ふつうのことでも
とくべつでも
あんまりオニーチャンが関係なくても
ひきずってきてしまうんだから。
それはリカの欲望だから
しかたない!
ほんのう!
もとめるこころ!
だよネ。
ふたりはね。
一年くらいまえの
風の子の時代から
もっと元気になっているみたいに
とびだしていくのは
だれのせいだ!
ふたりでみつけたいこと
いっぱいあるのが
いけなんだから。
こんな気持ちにさせて
どういうつもりだ!
したいことがいっぱいありすぎて
オニーチャンと見つけたいことが多すぎて
とまらなくなっちゃった。
しょうがないから──
せきにんとってね。