吹雪

『おあずけ』
白いテーブルクロスと
無地の皿が並んで
雪のように染まった
何もかも純白の景色。
ケーキが消えたところで
染み一つない白さは
変わることはないのに。
よく見れば
テーブルクロスには
抜けない染みはありますが。
これはおそらく、青空が何かをこぼした跡ですね。
来年に向けての大掃除で、また真っ白に戻るでしょうか?
ともかく
たったひとつの要素が欠けただけで
わずか一色だけのテーブルも
陰影が濃くなるよう。
食後のデザート。
とても大切なものだとする意見は
家族の中でも多いようで
私も、それほど積極的に反対はしません。
もっと重要なのは
栄養面だと思うけれど。
バランスが崩れすぎなければ
甘いものも
決して
悪さをしない。
はず。
ですから
デザートの種類にこだわる必要はなく
柿を切って並べるのも季節感があるものだし
夏場はさわやかなゼリーで
今の時期は蒸して作るプリンも定番なのだし
あまり同じものばかり食べるわけにいかないから
試作品のケーキがデザートになるのは
今日まで、
次回はクリスマス本番のお楽しみ、
という蛍姉の宣言に
身を切られるような悲鳴をあげるほどには
私はあまり……
こだわらないので。
夕凪姉は
食後に部屋に戻ったら
なぐさめてほしいと
要求してきましたが
そう言うわりには、ベッドをゴロゴロ激しく飛び回って
元気そうです。
大丈夫です。
でもキミが気になるなら
なぐさめてあげたら
夕凪姉も喜ぶと思います。
いったいどうやってなぐさめるのか
よくわかりませんが。
洋菓子の本を広げながら、
ということになるのでしょうか?
その行為は
楽しいのでしょうか?
食べるのとは違う感覚だと思いますが
なぐさめになるのでしょうか。
私にはあまり想像がつきません。
食事の楽しさは──
いつもメニューばかりにあるとは
考えていないので。
調理に参加する人ばかりに限らない
おそらくキミも
協力して作り上げているものだと思うので。
なにもデザートがなくなるという話ではないのだし。
ああ、
クリスマスが近いのか、
と思った程度です。
サンタクロースへの手紙も
そろそろ書き上げなくては、
と。
私自身の経験は
あまり多いほうではないけれど
これまで何度もクリスマスの日を重ねてきた家族が
今年も一緒に過ごしてくれると──
約束しているのだし。
おそらく、
ケーキが不足して困るということはありません。
あまり聞いたことがない状態なので。
クリスマスの本をいくつか開いてみても
そのようなトラブルが発生したとは
どこにも記述がないようです。
そのような主張をする人がいても
おそらく今後も何も問題はないでしょう。
もうすぐ、
なのか
じりじりと
今か今かと指折り数える
長い時間なのか
私にとっていったいどういうことになるのか
今のところは予測ができませんが。
家族の状況を観察していても
しばらくケーキがなくてもあまり困らないと考えられる者は
どうやら
もしキミがこの件で、夕凪姉のような悲しい気持ちになるようなら
おそらく慰めは
私の役目であるのが
適切な状態である、
と思います。
どのような慰めがいいのか
よくわかりませんが。
クリスマスの本を
一緒に読みますか?
星花姉と夕凪姉が姉たちのつてで集めてくるので
私たちの部屋には
数日ゆっくり眺める分はあると思います。
早く手紙を書き上げる
何か参考になる内容が見つかるといいのですが。
これだけは
どんなに詳しい本を開いて探しても、簡単には見つからない
私の望み。
それは……
たぶんケーキではないでしょう。
もうすぐ必ず訪れる
私たち家族がそろって迎えるその日に
豊富なクリスマスの経験を重ねた先輩が
確かに用意してくれるのだと
私にしては根拠が乏しい意見かもしれないけれど
おそらくそうなると考えています。
ですので
焦らなくても
私たちのもとに、クリスマスは
焦らずに。
その日が来るまで待っています。
聞いた話によれば
想像して待つ時間も楽しいものだとか。
だとしたら
その楽しさを
共に経験して、
記憶に残す相手がいてくれなければ
後になってはっきり思い返すには
私ひとりの観察では
少々頼りない。
星花姉も、夕凪姉も
キミも巻き込んで
私はさまざまな想像を
数限りなく繰り返しながら
時間を忘れて
寒さも忘れたように
暖房を切った部屋の中でも、本を広げている
と、そのように過ごすと考えられる。
寒さには強いので大丈夫です。
本を広げたままもぐりこむベッドに
星花姉たちや、キミを誘うスペースがないことを
不満に思っているのは
普段はそんな布団からはみ出すような容量オーバーになる事態を
自分のベッドの機能として期待したことがないはずなのに
このごろは、なぜなのだろう……
それは、どうも自分でも不思議なことです。