真璃

『てのひらを』
まだまだ
寒いなんて言って
肩を丸めている場合じゃないの。
そりゃあ
雨が降ったらちょっとは
これはもう
寒い季節に燦然と輝く宝石のような
やきいもや
にくまんの
頼もしいおともを引き連れてさえも
なかなか戦い抜ける気がしないけど
それでも
乙女なら!
革命の揺れる炎を
恋だけで渡る
そう、女の子は誰もが可憐な姫君。
であるなら
少々勝ち目のない戦いであったって。
おやつの暖かさが足りないなら
わっふるもふもふ
はちみつもかけて
いただくのよ!
エネルギーをおなかに詰めて
鍛えぬいた剣のひらめきと
曲げることのない鋼の心で
でもいちおう健康と
美容には人一倍気を使いつつ
どんな寒さにも負けないように
凛と顔を上げて
背を伸ばして
気高い瞳で
前だけを見つめるの。
寒くても
うつむいたりしない。
力がある。
いっぱい
好きな人から
もらえるんだもの。
それが
女の子の
強さなのだから。
というわけで
マリーもフェルゼンとつなぐ手から
燃える愛の炎を受け取りながら
飛び出していく世界は
数え切れない葉っぱも波うって色づく
深まる秋の景色。
それはときどき
葉が落ちてしまう
さむざむとした枝も見つかる
いよいよもっと今までよりも手をぎゅっとして
いつまでも離れないまま
乗り越える強い覚悟を心の中に新たにする
厳しい冬のはじまり。
キリギリスがおやどを探して
ムーミン谷は静かな寝息だけに包まれてしまっても
マリーはフェルゼンと情熱を分け合いながら
冬を乗り切る
パワーにします!
いぶくろには詰め込んでおけないエネルギーだけど
補給が必要になったら、
心が寒さに凍えてきたら。
吹雪舞う暴風も乗り越えて、相手がどこにいてもきっと会いに行く。
二人を本当に阻む障害なんて
この世には何もないのよ。
乗り越えられるの。
でもいちばんは
離れ離れにならないで
障害もなく
一緒にいることかな。
女王マリーの
心からの望みは
ただそれだけ。
ああ、
マリーがもうちょっと大きかったら
幼稚園と高校の壁なんかで
二人は隔てられなくても良かったのに
恋する二人のおじゃまをして
神様は気がきかないの。
妬いてしまうの?
マリーがかわいいから。
フェルゼンだけのものだから。
ううん、それは当然のことなんだし、
へそを曲げるなんて
神様はしないわ。
これはきっと
年の差でやきもきすることも楽しみなさいっていう
ちょっといたずらな贈り物のひとつなのよ。
たぶん。
寒い冬も
もっとくっつきなさいっていう
おぼしめし。
おせっかいなのね。
こうなってしまったなら
しょうがないわよね。
もうすぐ冬は来るのだし。
今よりもっと
くっついていないといけないわ。
こんなにいい天気で
おそらがぺかぺか
マリーたちのために、がんばって光を注いでくれる日は
やっぱりまだまだ
寒さに丸まってなんていられないの。
つないだ手と違うもう一つのほうだって
太陽にすかしてみたら
秋の日差しの下でも真っ赤で
こちらの手はどうやって
愛を伝えたらいいのかしらって
めらめらしている。
こっちの手は
マリーとフェルゼンの愛する
ちっちゃなかわいい妹たちを連れて
こんなお天気の秋の日は
楽しいことがあるわよねって
連れ出してあげましょう。
一緒に見に行く人がいっぱいなら
とってもうれしいって
ぬくもりが伝え合ってくれると思うの。
そして、たまには
特別な景色を
フェルゼンと二人だけで
こっそり探しに行く、
そんな楽しみも
これから変わっていく季節には
いっぱい見つかるわよね。
きのうまでの雲が晴れて
明るい光がこぼれたら
こんな日はいつも
マリーの予感は
きっと当たるのよ。