吹雪

『ショック』
思いがけない衝撃に襲われて
驚きと、恐れと
一瞬で上昇する体温の感覚を伴って
伸ばした指先を引き寄せる動作。
運動の直後に良く似た鼓動が
瞬間に押し寄せて、コントロールできなくなる。
止められない小さな痛み。
それは──
なぞなぞのつもりではないので
答えは恋だと春風姉が指摘する言葉は勘違いであり
日常会話でもよくある思い違いにすぎない。
時間をかけて会話をする環境が常に整っているとは限らず
また別の機会で互いの穏やかな表情を連れて交わす会話の材料。
そう、
私も笑顔で話をする機会はあるのだし。
自分で気づかず
頬が緩んでいる状態は、誰にだって当然。
ただ、欲を言えば。
私にも希望を言葉で伝えたい場合はあるので。
だから、笑顔で勘違いを訂正するよりも
ごく個人的な考えをなるべく理解してもらいたいと望むこともあり
比較的難しい要求を望んでも答えてもらえると期待する相手もいるので
だから──
説明不足であっても。
小さな弱点が伝わってしまうことに
気が進まないままで……
やがて開き直って、
伝わってもかまわない、
わかってもらったほうが
利点が多い、というより
仮に利点がなくても
私が理解してもらうことを望んでいる、
と気がついて
ついに思い切る
できれば、それよりも前にであれば理想的だけれど。
限られた情報量の交換のみを前提に、
この空気が乾燥する時期は
予想していない静電気の衝撃に戸惑うことが増えている、と
理解してもらえるとしたら
たぶん、このくらいのことで喜ぶのは普通ではない気がしていても
やはりうれしいのではないか、と予想している。
どうもあまり
私が思うほどには問題と認識されていないようで
わずかでも痛覚を刺激するのだから
世の中に静電気が好きな人がいるはずはない、
と考えていたのが
刺激を与え合って追いかけっこをするのが楽しいという
夕凪姉の意見もあって
直径が一定の円を描いて回転する二つか三つの物体が
そのままバターに変わる速度を無意識に計算してしまうくらいに
一時的に通常の思考能力を喪失してしまったのは
静電気の不快な刺激ばかりではなかったのかもしれません。
もしかしたらキミも
静電気の発生を
好意的にとらえる考えが
万が一にもあるとしたら
私は、自分の考えていた常識の概念を
大きく作り変える必要に至ると思われる……
それに、立夏姉が考えるところによれば
世の中には
いわゆる男性の好む本を
持たないのかもしれない男子もいるのではないかと
無人の隙に部屋を捜索したことのほうが問題ではないか、
それは立夏姉の探査能力の限界なのではないか、
あまり隠し事をするのが得意な人ではないらしいという観察から
一部の本を隠し通す技術についての議論は無意味ではないか、
といった複数の疑問を抜きにしても
果たして妥当性があるのかわからない条件から導き出された意見であったけれど
本当に、立夏姉が探していたような本を
いっさい持たない男子というのは
それほど特殊なタイプであると言えるのか。
立夏姉の常識が揺さぶられるほど
珍しいことなのか。
どうなのでしょうか。
世の中には
常識に挑戦するような事態が
ときおり発生するらしく、
もし、特殊な趣味の本を
私たちに黙って隠し持っていても
問題と考えないという意見も合って
私はあまり……
いえ、特殊な趣味の本ではなくて
静電気の話題ですが
どうなのですか?
君の意見を
一般的な常識論の範囲にとどまらず
さまざまな視点から
場合によっては、少し最初の趣旨から逸れたとしても
とにかく数多く
様々な方面にわたって
この際、私だけの胸にとどめるという条件も提案するので
恥ずかしいとか
普通でないとか
私が怒るとか
今のところはこだわらず
聞かせてもらえるならば
何かと参考になります。