海晴

『冬来たりなば』
凍える季節。
じんじんと体の内側まで染み入ってくるような北風が吹く頃は
コートの中で肩を丸めたりしながら、
湯気の立つコーヒーでゆっくり唇を湿らせたりしながら、
霙ちゃんと並んでこたつに入ったり、
まあ、あれはこたつで丸くなる猫みたいなものだと思えばかわいげもあるし
なでなでしたりしながら。
それから、小さい子たちが遊んでほしがったり
お疲れ様って背中を流してくれるえらい子に
お礼にこちらからも丁寧に磨いてあげたり、
あ、これは年齢性別良い子ふつうの子分け隔てなくいつでも大歓迎よ。
おうちのきょうだいはみんな私のかわいい妹たちと
それから、たったひとりの大切な弟なんだから。
明日の準備を済ませて
朝のお天気予報で、太陽の輝きが恋しい季節だからこそぴかぴか笑顔になるために
早目を心がけてベッドに入る前には
やっぱり、おやすみの一言と
愛しているってどれだけ表現してもかまわないから
恥ずかしがらないでと
抱きしめあう確認のしぐさ。
今日のキミは、元気な子たちにだいぶもまれて
昨日よりもたくましくなったかしら?
触れ合ってぬくもりを感じると
胸の奥のほうの、自分で触れることができないあたりまで
ぽっと灯がついて
あたたかくなるよ。
明日を楽しみにできる
原動力。
勝手にもらって行くパワー。
こないだのおばけみたいに、奪ってしまうだけじゃなくて
私からの思いを伝えながら
愛する人たちに、元気をあげられていたらいいんだけど。
あれこれ騒動が続く
楽しい冬の毎日を過ごして
寒い季節が人恋しいものだということさえ、
たまに気づいて驚いてしまうくらい
ばたばたしながら、
今までよりも少し近くに集まって
みんなの力を感じていたら
そのうち、芽吹きの季節には
厚着を脱ぎ捨てて日差しの下に飛び出していく子が
たぶん私を読んで手を振ってくれている。
それとも、走り出す背中を心配そうに見ている人のことなんて目にも入らないで
新しい景色の中で見つかるもの全部に夢中になって
こちらから声をかけるまで止まらないみたいに弾んでいる小さな体を
隣にいる愛しい人と
同じ気持ちで笑顔を交わしながら、見つめているのかな。
やがて来る春は
今は、木の芽時を待って眠りに付く準備をはじめた枝からは想像もできないで
いよいよ寒さも増してきたばかりなのに
ミニスカートでいられた時期が恋しくなるなんて。
寒さなんかに
負けてばかりいられない!
若いお天気お姉さんは、ミニスカートでフレッシュに元気を見せなくちゃ!
じゃなくて、
寒い季節を乗り越える支度をするのよね。
この冬にぞくぞくやってくる楽しいことを思い浮かべながら
だんだんとはじめなくっちゃね。
やがてやってくるのは
世界中が愛する心であふれる
寒い時期を一番暖かくするクリスマス。
それから、大騒ぎしながら過ごした一年を
大事な宝箱から取り出すみたいにしみじみ思い返す、
たぶんしみじみできる余裕くらいは少しありそうな、
いやでも、なかなか落ち着く時間が取れない想像も
ちらちら浮かんでくるような
年の瀬と、新しくはじまるさわやかな年の到来。
みんなが楽しみにしている冬休みの予定もそろそろ考えたほうがいいし
それに、氷柱ちゃんは知らないふりをしたかったみたいだけど
だって自分の誕生日に
他の軽薄な男の人と同じとは思いたくないかもしれなくたって。
きっと、その日は誰かが氷柱ちゃんのことを特別に思って
混雑したお店で大変な思いをしてでも、
喜んでくれるかとっても悩んでも
必ず心のこもった贈り物を持ち帰ってくれると
信じられるんだから。
氷柱ちゃんも、観念して
バレンタインくらいは素直になれる日だと思って
受け入れたらいいのにね。
これから冬が始まって
長く寒い季節を、助け合いながら過ごす時間が増えたら
あの子だって少しは大好きな人のことを
見直したり、
というか、普段からまぶしくあこがれている大事な人だって素直に言えるようになったり。
できるかな?
道は長そうだけど
冬も長く、
そして、私たちがこれから過ごす時間は
大変な寒さやいろいろな出来事が詰まってそうな時期も比べ物にならないほど
ずっと長く続いていく。
もしも季節の変わり目に体調を崩したって
誰もお見舞いに来ないで放っておいてもらうなんて
この家では、なかなかできなくて
風邪をうつしてしまう心配でゆっくり休めないかもしれないんだから
そのへんをちゃんと覚悟しておいて
体には気をつけてね。
明日は休日だけど
天気予報の仕事はいつも通り。
よく寝て早起きして
元気な顔で、お姉ちゃんの活躍を見ていてね。
お日様笑顔をしっかり届けるために
ここで今のうちに力をもらっておいても
かまわないよね。
明日は早く帰ってくるから
冬を乗り越えるための暖かい服でも
二人で見に行けそうかしら。
それともやっぱり、みんなのぶんの買い物になっちゃうかな。
楽しみだね。
明日も、私たち家族の過ごす休日があたたかでありますように。
お日様さんもよろしくね。
それに、お日様よりもまぶしい
私の大切な人も
これからいつだって
元気に楽しく過ごせますように。