綿雪

『さらさら』
みんなの頭の上を
お日様がめぐって
季節が変わって行きます。
夕方の黒い影も
日に日に長くなって
暗がりに消えていく時間も、だんだん早くなる
秋が来たの。
油断すると、薄着の上を滑るように吹き抜ける冷たい風と
夜に広がる真っ暗な色が温度を持って行ってしまうみたいな
急な寒さ。
天気予報でも、
一日の気温差が大きいので
体調を崩さないように注意と
ミニスカートのお天気お姉さんが
上着に着込んだのは
ユキも一緒に選んだ、なるべくあったかそうなもこもこ。
海晴お姉ちゃんは朝早く出かけないといけないから
夜の間に服を用意したの。
相談してもらえるなんて
ユキもこう見えて、信頼されているんです。
夜寝る前はみんな忙しくて
暇があるのはユキだけだから、なのかもしれないけど
でもせいいっぱい。
あったかいのはどれかな、とか
このごろ気になるようになってきたおしゃれの話だとか。
知っていることをなるべく積み重ねて
相談してもらったら、できるだけの協力をしたくて
ユキは選びます。
まさか、ミニスカートだとは思わなかったの。
寒くないのかな?
帰ってきたら、温かい飲み物を用意して待っていられたらいいかな。
その前に、着替えが先でしょうか?
少し考えていると気づくこと。
朝早くにテレビに出た格好のままじゃなくて
夕方帰ってくるときには
ちゃんと暖かい格好に着替えて帰ってきますよね。
お仕事のあとは
青春がまばゆくかがやく
ぴかぴかのキャンパスライフを過ごすんだって。
お勉強の時間は
寒かったら調節しながらです。
帰ってきた海晴お姉ちゃんは、朝のテレビのときより暖かくしているから
ほっとしながら
ユキがそんなに心配する必要ないんだなって恥ずかしくなっちゃう。
恥ずかしいけど
やっぱりいつも、服を選ぶ相談の時は
もう少し着て行ってほしいとお願いしてしまいます。
海晴お姉ちゃんは、おしゃれのために
女の子はいつでも戦いたいものだって言うの。
でも、ユキもときどきふるえてしまうほど
寒くなる時期です。
一日の激しい気温差に
しっかり対策。
押し付けるように、厚着をすすめてしまうユキです。
お兄ちゃんはやっぱり女の子は
おしゃれのために戦っていてほしいと思う?
ユキがもう少し大きなお姉さんに変わって
体がだんだんじょうぶになったら
やっぱりお兄ちゃんの意見を聞きながら
今よりかわいくなりたくて
寒い風に負けないでいられるのでしょうか?
今日は、お昼はよく晴れてあったか。
体力を奪われるような大変な暑さの季節が
過ぎていった昨日の向こうに遠ざかっていくように
ぽかぽかおだやかな
うれしい日差し。
ユキもゆっくり
目を閉じて全身で迎えるみたいに
やさしく微笑んでいるようなお日様に包まれて
のどかで、なんだかやわらかな午後を過ごしました。
今の時期はありがたいお日様ですね。
こんなに寒さを意識する時間が増えていくと
お庭で静かに光を浴びているお布団も
まもなくユキたちを包むお仕事の時間に備えて一眠りをしているように見えて
きっと、お姉ちゃんたちが帰ってきて取り込む頃には
気持ちよくふんわり膨らんでいるのだと思いました。
それが、ちょっと驚いたことで
夕方になって影が落ちて、そよそよ風まで冷たくなったら
みるみるお布団も湿気を吸って
冷たくぺたんこになるの。
なんとなく目を閉じているようなお外を見ているような
半分眠っているような気持ちのいいリビングの日なたに
ぱっと影がかかった瞬間に
目を開けたら、外ではお布団がぺったり。
それとも、ユキも少し長い時間眠っていたのかしら?
氷柱お姉ちゃんが、ユキのところまで
ちょっと湿って重そうなお布団を
ふわふわの髪みたいで気持ち良さそうだったのに
秋の夕方は
油断がならないな!
って、ユキの髪にそっと触れながら
ふわふわで
気持ち良さそうですか?
お日様の力をいっぱい吸い込んだあとに、やわらかでいい匂いがするものなら
のんびりひなたぼっこしていたユキも
いつもよりふんわりしていますか?
それとも
お風呂に入ってきれいに洗ったあとのほかほかは
お日様の下で眠った昼間のお布団とは少し違うものになったかしら?
少し癖があるユキの髪も
夕方の冷たい影から逃げているときも
湿ってぺったんこになって
麗お姉ちゃんみたいにぴしっとさらさらになったりはしないの。
日なたのユキがふわふわしていても
やっぱりお布団みたいに暖かくていい匂いで包んでくれたり
なかなかできないみたいです。
麗お姉ちゃんの髪はさらさらで、きれいでしょう?
ユキは別に、癖があってもくしが通りにくいなんてことはないし
大事にしていたいきれいでつやつやした宝物だけど
ふくらんでいるからって
ふっくらやわらかで、この時期に大切なあたたかさでいっぱいになったりはしないの。
きりっとしたスタイルの
きれいなお姉さんみたいになれたらなあと時々思います。
立夏お姉ちゃんは
ユキのちょっと癖のついた髪のほうが、女の子らしく見えてうらやましいんだって。
大人のお姉さんになったら
髪をいじっておしゃれをして、なんて
すごく楽しそうな未来の夢を聞かせてくれました。
もしかしたらユキも、大きくなったら
髪をピシッと
きりっと姿勢のいいお姉さんになって
テレビの前にいるお兄ちゃんに
明るい笑顔を届けるなんてことが
いつかそのうちに?
遠い未来。
叶うかどうかは
まだ全然わからない
そんな空想を、そっと夢に見た
のどかな秋の一日でした。