2018-01-01から1年間の記事一覧

『歓喜の日々』 街はだんだんクリスマスムードに染まりつつある。 まだ11月の間は 駅の入り口のクリスマスイルミネーションや デパートのエントランスに飾られるツリー、 ついでにツリーの間と間にあらわれた 蛍姉さまがよく足を運ぶ年末特設お楽しみ福引…

氷柱

『ジングルベルの罠』 まだ一ヶ月も先だというのに 世の中は変わり者ばっかり。 理性的に考えれば ケーキの予約とサンタさんへの手紙だけ 用意しておいたら あとはすることもないじゃない。 さみしさのせいで 余計に寒さが身に染みるから 今だけでも彼氏が欲…

綿雪

『しあわせの名は』 風が冷たい季節。 こすり合わせた手に 息を吐きかけ どうにか家までたどりつけるよう 自分を励まして── 帰り道の途中 お姉ちゃんたちかかわいい妹たちか それともたまたま帰りが早いおにいちゃんか おうちの誰かに出会わないかなって 少…

真璃

『旅立ち』 暖かな布団で すやすや寝息を立てる かわいらしい子供たち。 眠る前にもらった 新品のパジャマ。 あんなに喜んでいたパジャマで 布団に入ったら── 穏やかで幸せそうで 見ているだけで心が和む 子供たちの顔。 えっ、マリーはまだ 和ませるほうで…

海晴

『願望』 にゃんにゃん にゃーん。 いや、やっぱり ぺんぺん ぺーん。 こっちかな。 子供の頃には ママにおねだりばっかりで 夏が降りてくるような白いワンピース、 あったかマフラーも 自分で作れるなんて なかなか気がつかなかった子も 今では長女になり──…

さくら

『へんしん』 うーっ さむいさむい! さくらはさむいのがにがて。 ぶるぶるふるえて 丸まって 体を小さくしちゃうと 小さなさくらが どこにもなくなっちゃう。 おへやがあったかいと いいんだけれど── さくらはあわてんぼう。 おねえちゃんたちも さくらのお…

小雨

『とまどい』 どうしよう…… お部屋に閉じこもりがちな小雨を 誘い出してくれるのは いつも必ず 誰かがくれるきっかけ。 そう考えると 断るなんて 小雨にはできなくて…… 街はきらきら クリスマスの準備。 大きなデパートも 駅前の飾りつけも── それから この…

ヒカル

『あなたから私へ』 寒い日が続くようになった。 慌てて準備をするいつもの朝、 出かける前に着込んだ厚着の中で 早く暖かい時間にならないかと うつむいている。 乾いた石畳を歩く登校の景色に 落ち葉を踏む音と 肌をくすぐる風の冷たさが加わって もう、ど…

青空

『おどろきそら』 おにいちゃん きいて! そらはおどろくと とびはねて たのしくなって おおごえをだす。 つぎに おこられる。 なにごとかとおもった! って。 そらは おこられちゃったーって なるの! けさは おきたら おにわがあめでぬれていた。 わーっ …

立夏

『年末風景』 あれ? ないなあ…… なぜだ! リッカ、すぐものをなくすからなぁ。 どこにやったんだろう? 右を見ても左を見てもわからない。 たよれる小雨ちゃんも麗ちゃんも しらないという。 こまった! 探すときにぶつけすぎたスリッパは 裏がはがれちゃっ…

あさひ

『がぶぅ』 あーたん、 ぱっ! どっどっどーん! がぶ! がぶがぶがぶ! もぐもぐ…… うん! ぐいぐい。 よーいしょ よーいしょっ よっこいしょ。 くりちゅぅ ちゅきっ! がぶがぶ! もぐもぐ せっせ せっせ もぐもぐ…… …… すやぁ…… (あさひがきたぞ! たの…

星花

『ある日の』 窓の外からきれいな声が 高く長く 私たちの部屋に届いてくるの。 そうするといつも必ず かわいくて 楽しくなっちゃって 鳥が枝にとまるふりをしながら みんなのところに近づいて よく似た声を出す子が ひとりふたり。 はじまったら どんどん増…

夕凪

『たからもの』 コレクター心をくすぐる ちょっとうれしいもの。 いつも見ているあれと ほんのちょっぴり違っていて それがなかなか おしゃれだったりするの。 たとえば松ぼっくりの色が ほんのり色あせたやさしい黄色だったりすると 大人っぽいおしゃれ。 …

『エプロン』 人間には二つの種類があって すなわち! かわいいエプロンが似合う人間と似合わない人間よ! そもそもこういう二種類に分ける話のときって 言われてみればなるほどあるあるとうなずく 絶妙なラインの話題になるのが普通でしょう。 朝食のパン派…

『Aqours紅白出場決定おめでとうございます』 目を覚まし見上げた空は 薄い雲間からもうすぐ光が射してきそうな── でも最近しばらく続く厳しい寒さに あと少しの間がんばって耐えていかないといけない ちょっと猫背になって丸まってしまいそうな曇り空。 焼…

観月

『ろうそく』 針がまわって一分間。 数字が巡って同じ時間。 よくできた時計のおかげで 人の世の中はとても便利になった。 むかしはこのように 太くて重たいろうそくの とろりとろり溶け落ちるまでを── よく数えたものじゃ。 白いろうそくに 揺れるのは── 赤…

『暗黒』 人が生まれる前から 夜は暗く── 人が消え大地が塵に帰った後もなお 燃え上がる星の祝福がなければ 宇宙はいつまでも闇に包まれたまま。 太陽の炎がいつか消え去る遠い未来を思わせて 天の川を遠く見つめ浮かぶ球体の 光が当たらない面は── 寂しく心…

吹雪

『ミステイク』 人が積み重ねた経験が 本棚の百科事典に収まり 歴史と呼ばれるようになる。 私が両手で持てる重さの 一冊の書物は 人間たちの好奇心と情報集欲の集積によって 際限なく湧き出す知恵の泉となり 私たちに豊穣な時間を与える。 両手で広げたペー…

虹子

『しっぽ』 いきものみーんな しっぽがある。 いぬのおしりに しっぽ。 にげるねこがふりふり しっぽ。 おさるにも ペンギンにも ピカチュウにも しっぽがあるのだから にじこにかわいい しっぽがないのは なぜ!? ほんとうは あるんじゃない? あるつもり…

春風

『かわいいおそうじ娘』 春風は小さい頃からずっと かわいいおそうじ屋さん。 ママのあとをついていって ほうきを貸してもらった あの日から── ほうきが手を離れることはない。 春風の背丈よりも大きかったほうきが毎日 教えてくれるお仕事。 廊下の隅がよご…

氷柱

『迷宮図書館』 勉強ができる子も できない子も 計算が得意じゃない子も 暇さえあれば走りまわる子も 誰でも好きな場所が 図書館。 静かにしているのが苦手なのに 一緒に来た私の後をちょこちょこ追いかけて 袖を引っ張り手をつなぎ 口だけは健気にぱくぱく…

ヒカル

『シャンプー』 うっかり買い置きを忘れて 私たちの家から シャンプーが消えた。 一大事だ。 戸棚にも 部屋にもない。 空のボトルをひっくり返しても出てこない。 頭を洗う手段も お湯だけ。 海晴姉や春風姉は動揺しているし 霙姉は平静を装った顔で 落ち着…

青空

『おしずかに』 しーっ! しずかに! おおごえをだすと そらがやってきて こらー! おこる。 あたまを ぺちぺちたたく。 あたまに とどかなかったら── そのへんをぺちぺちする そら。 だまって いないと── そらがくる。 ほらほら あれはなんだ。 ほーらほら …

観月

『物語の始まり』 日が落ちるのが早くなり 夜が長くなってくると 家族とお部屋の中にいる時間が増えるので── すごろくやトランプ、 囲碁に将棋も そろそろ飽きてきた頃じゃ。 みんなで図書館に行ったり 地下室の本棚を探したりして 読書の秋を満喫するのも …

真璃

『ラビリンス』 このお城から この海までは 女王マリーのもの。 本当は世界の果てから果てまで 世界で一番の女王のものになるはずだけど マリーの家はかわいい20人きょうだいの家族だもの。 みんなで仲良く分けなきゃいけないわ。 というわけで 子供たちが…

亞里亞BDSS

『バーニングサン』 今年も亞里亞の誕生日がやって来た。 亞里亞の誕生日プレゼントだが、今回は情報戦に頼ることにした。 斥候を送り、欲しいものをこっそり探ってくるという作戦を立てたのだ。 「というわけで報告を頼むぞ四葉」 「はい兄チャマ。亞里亞ち…

海晴

『ラストスパート』 ハロウィンが終わり 街を飾っていた秋色のかぼちゃたちが眠りについて 白い冬の国で準備をする楽しげな鈴の音が 私たちの町に聞こえはじめたような気がする 11月の始まり。 汗をかいて夢中で走り抜けてきた一年の ゴールテープがうっす…

綿雪

『ハロウィン』 10月31日はハロウィンです。 黒い帽子と魔女の服で 夕暮れを歩く子供たち。 はしゃいだその姿の中には よく見ると見慣れぬ かぼちゃの頭の子供が! こんな日は 世界のどこかでそんなふしぎなこともあるみたいですが 今年のユキたちの家は…

『ダークライド』 明日はハロウィン本番。 言われてみれば街はどこか 楽しみにしているみたいにソワソワしているような気もするし こころなしか家の中は かぼちゃの匂いと 仮装の準備らしい色とりどりの布でいっぱい。 ここにあるつばの広い帽子に鳥の羽、 …

星花

『ものわすれ』 よっこらしょっと 立ち上がって さあ用事をはじめようとしたときに あれっ? いま、なにをするつもりだったんだっけ。 …… 聞いた話によると 大人になったら よくあることなのだそうです! そんな まさかあ…… でも、考えてみれば そういえばあ…