2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

氷柱

『さくら館の惨劇』 謎が謎を呼ぶのは 春を迎えんとするわが街の 桜の並木道の噂。 そういえば私の記憶でも あの丘の上には花が咲くような木は なかったはずなんだけど 今日寄ってみたら確かにあったの。 ぐんと腕を伸ばす枝のあちこちには 芽吹く前の小さな…

『夜風』 丘の上のほうから 慟哭に似て聞こえてくるもの。 風が強くなるこのごろ 春の嵐がついに来たのかと わがやの子供たちはうきうきしてるが 果たしてそうであろうか? 妖艶な赤の 梅桃桜の枝に ふくらむ芽が目立ってきた。 私たちの街にある桜も 凍える…

吹雪

『データ解析』 人間であるか機械であるかを問わず 記憶領域は無限大ではありません。 取り出す必要のある要素が増加すると参照に時間がかかるため 余裕のあるときにデータの整頓をします。 重要なものとそうでないものを分けて保存すること。 不要と思える…

星花

『閉幕』 世界に挑んだ選手のみなさん、お疲れ様でした。 テレビを見ているだけでも 積み重ねてきた練習、本番に望む緊張感── 私たちにはわからない大変なことがたくさんあったと思います。 全ての競技を見ることはできないけど 見ているだけでひきつけられ…

真璃

『マヨと隠し味と』 かっこいい女の子になるには 好き嫌いなくご飯を食べるのも だいじなことのひとつ。 体を作る手助けは 元気いっぱいのいただきますと つるりんと輝くお皿を並べたごちそうさま。 いーっぱい食べて あのオリンピックで輝くお兄さんやお姉…

さくら

『おさがり』 おおきなおおきな スケッチブック。 さくらのつかうおえかきちょうを ならべても── まだおおきい! ひらいてせいくらべをしたら ちいさいさくらより もっとおおきい! でも、よく見たら さくらのほうがちょっとおおきかったの。 そだってるよ。…

綿雪

『やさしい景色』 冬はときどき遠ざかり また近づいて 冷たい風がみんなの肌を刺す頃に くっつきあって暖めあっていると 雲が晴れた時に近づいた顔が照れくさいような。 ユキももっとお兄ちゃんに手を握ってもらって 暖めてもらうのが 顔が熱くなるほど恥ず…

氷柱

『かわいい雛人形』 とうとう我が家にも 今年の雛人形が並べられる。 しまっておいたお人形たちは いつもの年と変わらずに 褪せることのない色で鮮やか。 女の子がいっぱいの家の雛人形は 毎年のことなのに 飾りも豪華で数が多くて 去年の写真と比べなくちゃ…

夕凪

『夕凪ネクストドアー』 夕凪だよ! お兄ちゃんの夕凪は 今日も駆け回ってる。 地球が止まっても 隕石が降ってきても 夕凪はあきらめない。 お兄ちゃん! 今日も夕凪はマホウを叶えるために 研究に夢中。 指をふり呪文をとなえポーズをきめて なんでも叶うと…

吹雪

『ディクショナリー』 右手の動きはどうなのか。 左手はまったく違うのか。 動力となるのは酸素と肉と 神経を伝わる微弱な電流。 まったく同じ構造にすれば 再現は可能なのか。 実は、考えていることがあります。 人間とは情報で構築されていると考えてもい…

『帰還』 ただいま。 子供の頃からの夢だった あのシチュエーション── つまらないものですが お納めくださいというあれを ごっこでやろうと思っていたら 玄関をくぐるなり 身包みをはがされるように おみやげを奪い取られていった。 変わらずみんな元気で何…

『陥穽と振子』 霙姉さまからのメールはいつも短い。 お友達の家に泊まるのだと思っていたら いつのまにか動物園に行ったり 山登りに向かっていたりする。 おまけに余計なポエムを挟まないではいられないらしくて 晩ご飯の予定を聞いた蛍姉さまが これはどう…

青空

『きんようび』 しってる? きんようびって たのしいひ。 みんながまってる ゆめのような うれしい たのしい おいしい うっきうき。 そら、うきうきするのすき! おどるよ! うれしいから まいにちまいにち きょう、きんようびだよーって いってまわるの。 …

観月

『鬼女』 鋭い角を生やして 牙を尖らせ 口は耳まで大きく裂けて 振り乱す髪は恐ろしく。 手には釘を持つという。 もしも万が一、目が合ってしまったら 蛇ににらまれたかえるの気持ちになるらしい。 わらわは逃げるのに慣れているからともかく さくらはおしっ…

バレンタイン

・海晴 生まれたての朝の光が まだ薄く、でも広がる白の清らかさが さわやかな一日の始まりを予感させる頃。 上着を引き寄せ、吐く息で手を温めて 暖房が動き出すのを待ちながら これからはじまる冬の日にわくわくしている。 日の差し込む窓辺であいさつをか…

海晴

『後夜祭』 と、いうわけで。 夜は更けて 今年も私たちのバレンタインデーが 終わろうとしています。 毎日この日を楽しみにして 相談をしてみたり 密かに心の中に企みを持ったりした 長くて、そして同時に短かく感じていた準備期間。 本番の朝の緊張感と と…

あさひ

『ちゃお!』 くんくん…… くんくんくん…… ぬあっ! むむむむっ ちょおー ちょお! ちょおえおー! ちゃおっ♪ ふわぁ ふわぁ ふわあぁ! うーがーおー! (おはなひくひくする…… このにおい…… ぬあっ! これは、まちがいない! しらないあじが あさひをよんで…

虹子

『ごろんごろん』 まどからながーい日がさして あったかな足元。 だったらにじこは ころがって もーっとほかほかするの! おへやのとの いりぐちからねころんで ごろごろごろ。 まどのほうまで── ころがりかえって くらいひかげのほうまで── にじこはまわる…

ヒカル

『戦いの時』 人生は長いようで短く、 短いと思ったら長いから。 まだ全然人生の何たるかを知らない ひよっこの私にわかることと言ったら 人間、生きていたら 勝ち目があろうとなかろうと 必ず立ち向かわなければならない戦いがあるということ。 逃げること…

小雨

『涙目』 あっ! お兄ちゃん、見てはダメです! 小雨は…… 小雨は、泣いてなんかいません! …… うそですけど…… でも、がんばって涙は途中で止めたし いったん外したメガネがどこかに行ってしまっても なんとか見つけられたから 大丈夫です! 明日は明るい笑顔…

『私のお姉ちゃん』 春風ちゃんは蛍の優しいお姉ちゃん。 ちょっと早く生まれたお姉ちゃんで ものしりでかわいくて 蛍の知りたいことをぜんぶ知っている。 それをみんな教えてくれたりもするよ。 キッチンに並んで立つと お料理の話もできるし お菓子も一緒…

春風

『メガトンパンチ』 私のたくましい王子様に こんなことを聞くのは変かもしれないけど…… 怒らないでくださいね。 ほら、王子様といっても 春風の目から見たらまぶしく輝いていても でもその体は 私たちと同じ人間ですから。 よく食べてもらって、よく休んで…

立夏

『こなごな!』 だーいすきなものには きれいな飾りをつけようとするのが 子供の頃からのリッカのとくちょう。 ノートの名前は カラフルに書かないとはじまらないし── スニーカーに通す紐も色がついたのに変える! お絵描き帳は中身を見れば一目で分かるくら…

星花

『私が作ります──?』 ありったけのチョコレート。 トン、トン、トン。 さらにおまけに── どってんばったん。 つるっころっどろっ しゅん。 という感じが続く 最近の家族の話題はといえば。 寒いと困りますねぇ だったり いちばんかわいい衣装とカバーガール…

あさひ

『わぶぅ!』 ふんふんふぅーん わふぅふっふ。 あばあば おっおっおーう。 んば! ゆぶぅぶ なっなっなー。 わぶっちゅ あんまー。 ふみゅう! あんばんば! ちゅあちゅあちゅあちゅー ぶちゅー ぶちゅむっちゅ! (おうたをうたおうね あさひ。 らんらんら…

ヒカル

『約束』 ゆうべは夢を見た。 春のように暖かい日の 優しい日差しの下にいる 小さな子供が その時の私で── なぜか妹もみんな揃っている記憶はあるのに 寒さを心配することも 鬼を追い払った良い子たちを 追い掛け回して片っ端から褒めることも すっかり忘れ…

綿雪

『節分』 2月3日は節分の日。 昔の暦では 年が新しく変わる、その前日。 明日からは春が私たちのおうちにも やって来るということになります! それが理由なのかな? ふだんよりも今日は暖かくて それほど本当の春みたいに太陽がぽかぽかでもないのに 過ご…

観月

『勇み足』 おや、これは── 楽しい豆まきは明日なのに もう廊下におまめが落ちている。 ついさきほど落ちたばかりのような きらきらのおまめ。 ほこりもかぶらず よごれもなく まるい真珠のようにきらめく。 はて、節分にはまだ早いのじゃ。 ヒカル姉じゃが…

氷柱

『変身』 お面をつけると 自分じゃないものになりきれるっていう 子供っぽい話。 もちろん節分の話題よ。 他の何物でもない。 そりゃまあ、演劇の分野などでは 伝統芸能でも現代劇でも、つまり時代を問わず 演出面や、またテーマ性の表現でも効果がある 文化…