星花

『忘れない』
波乱の展開と
先が知りたくなる多くの謎、
どうしても最後まで
見届けたくなる物語──
そんないいものに出会えたら
おうちで過ごす一日は
どれほど豊かになることだろう!
そして、さらに──
いつも前向きだったり自分の仕事に誠実だったり
魅力的な人ばかりが登場する世界で、
見ているこちらが追いかけることになる
一番かっこいい主人公が、
時にはまだ小さくて、少し頼りなくて、でも──
たとえくじけるとしても立ち上がって、
前に進むことを最後まであきらめない
いつも応援したくなる
すばらしい子だったとしたら──
そして。
もしも、願ってもいいのなら
登場人物たちと重ねた
いろんな体験を
ずっとこれからも覚えていようと思って
大事にするのと
同じくらいに──
おはなしの中の
ことだったとしても、
ここで出会った人たちがきっと
いつまでも──
見守っていた私たちと一緒に
この時を過ごしたことを
大切に思って──
忘れないでいてくれたらと思うような。
そんな欲張りなことを
思ってしまうような
できごとが、
今日もまた、
どこかのおうちの
小さい子のところにやってくるのです。
世の中には、本当に──
あたたかくて、やさしくて
驚きがいっぱいで、
全てが染み込むようで、胸に突き刺さる──
そんなものが──
まぶしく広がる電球の明かりみたいに
たくさんあるものですね!
星花は今日は、そんなふうに言いたくなる日を過ごしました。
あしたも、あさっても
今日の出会いを体の一部のして出来上がった子が
生きていきます。

海晴

『肌寒い日が続きます』
台風が過ぎて行って、
夏の暑さが残っていた分まで
持ち去ってしまったかのように──
今までの気分で薄着のままだと
肌寒さを実感する──
そんな日になったわね。
大嵐の後、
お外で遊んでも
様子が大丈夫かどうか、
お姉ちゃんたちと手をつないで
探索に乗り出した
小さい子たちも──
台風の被害がなかったのは確認できてよかったけど
今日は暖かなおうちの中で
ゆっくりしたい気分みたい。
まあ──うるさいのは変わらないけど♪
週末はまた雨で
蒸し暑くなりそうな予報だけど、
ここ数日はあまり
油断しないほうがいい気温ね──
ただでさえ季節の変わり目、
こんなに毎日の気温まで
落ち着かないとなると──
いつも明るくにぎやかで
悩みを知らない天使家の子供たちは、
ついうっかり
真夏の気分で汗をかいて
また裸足のままで出かけようとするのよ──
あんなにずっと
暑い暑い、
早く秋にならないかって
さわいでいたのに
すっかり秋の気温になったことに
全然気が付かないの!
どうしてそれを
断言できるかって、
それは──大人のお姉さんにも
子供の頃があったからかもしれないわね。
キミも気が付いたら、見ていてあげてね。
いつもみたいに無茶をすると大変だぞって──
もちろん、自分の体のこともしっかり守ってね。
あれっ、でも男の子って
つい無茶をしてしまう生き物だと
どこかで聞いた気がするから──
誰より何より、見ていてあげないといけないのかも──
大人のお姉さんは、
子供の頃を思い出しても
男のことだけは──よくわからないわ!
キミも体を大事にしないと
誰が気にしてどこから見ているものか
どうなってしまうか
確かなことは言えないんだから。
夏はもう
終わってしまうかもしれないから──
次の季節を
また元気なキミと過ごしたい
家族がいることを覚えておいてね。
さあ、私も──大きな嵐の過ぎた穏やかな日に、
夏服の片付けとタンスの整頓にとうとう向き合わなくちゃ!

綿雪

『雨の後』
大きな風の音が
子供たちを怖がらせた
長い夜の過ぎた後──
今日も雨が降ったりやんだりで
落ち着かないお天気ではあったけれど、
お庭の水たまりも
次第に消えて──
どうやらいつもの日常が
戻ってきた気がします。
お出かけや買い出しはまだできないけれど
飲み物をもって縁側の方の椅子で
外を眺めたり──
窓を開けて、優しい風の中で
小さい子に絵本を読んであげたり
もう、したいことは
なんでもできるの──
過ぎてしまうと
このあたりは
あまりたいしたことがなくてよかったですね。
あんなに怖ろしい音がしていたのに──
夜が明けてしまえば
まるで、秋の夜の全てが幻だったような
しとしと雨の日。
夕凪ちゃんのおまじないが
とてもよかったのでしょうか。
それとも、みんなで
協力して
何事もないように備えた準備のおかげかも。
あるいは、まさかまさか
ユキたちみんなのいるところに
いつも暖かくて
幸せなことばかりを抱えて
一緒にいてくれるような──
ユキの大好きなお兄ちゃんは
台風にも強いの!?
なんちゃって。
えへへ──
台風の後は暑くなることも多いけど、
このくらいの穏やかな日が
ユキにはちょうどいいです。
大変な日を乗り越えたご褒美の
静かで何事もない──みんなで過ごせる日でしょうか。
あ、でも
いざという時に備えて買い込んだ食材を使えるようになって、
今日はキッチンのほうが忙しいんだって。
呼ばれたらお手伝いに行かなくちゃ。
くもった空から
ぽつぽつ思い出したように降る雨と、
たまにのぞく晴れ間。
それは──大変な台風がもう過ぎ去ったあかし。
今日のユキは、ふつうの日を
みんなと一緒に過ごしています──

『すべての』
最近の非常食はあなどれない。
携帯性はもちろん
食べやすさ──
何よりもその味で
私たちを満足させる。
非常食が必要になる
心細い状況で、
食事に喜びを得るということが
どれだけ支えになるか、
想像できる。
もう普段から
食べていてもいいのではと
思うような──
入れ替えのために
食べていると、
様々な面で
学ぶことは多い──
災害に向き合う心構え、
備えをしておくことの重要性、
そして──
いつ何が起こるかわからない
日常を過ごし、
その大切さを思うこと──
準備をしておく──それは
本当に大事な経験だ。
私たちの街で台風の影響が大きくなるのは
今夜から明日の午前中にかけての時間になる予報。
だいぶ遠くを進むコースだが、
だんだん風も強くなって
雨の音も聞こえてきた。
次第に──ゆっくりと──といった感じだ。
たまに風が収まる時間もあるようだし、
このまま何事もなく過ぎてくれればいいんだが。
気になる非常食の話だが、
近いうちに入れ替えの予定もあるから
台風が過ぎ去った後、好きなのを選んで食べていいそうだ。
まだ油断をするには早いけれど──
怖い夜をいい子で乗り越えた後の
ごほうびがやがてあるかもしれないと
考えるのも、気力が湧くだろう?
喜びを思い
人は夜を過ごし──
今は雲が覆うあの漆黒に
星が瞬く時を待つ。
必ずその時が来るのだと信じる──
それは、はたして
私一人で叶うことなのかどうか?
ここにいてくれる人の支えとあらゆる姿が
実現させているのではないか──
答えを知るすべは、私にはない。

『準備中』
今日はだいぶ雨が降ったわね。
まだ台風は近づいていないから
これからなんだけど──
こんな時、
私くらいの年の子が
不安になったりわがままを言ったりすると
小さい子も怖がるから、
しっかりしないといけないの。
時間をかけて備えをする大人の人たちや、
海晴姉さまだってお天気がお仕事だから
大変なことは多いみたい。
私が文句を言って
みんなを困らせる理由なんて、
ひとつもないわ。
それでも──
やっぱり──
みんなが楽しみにしている
連休にやって来るのは、
台風に一言言いたくなるのも
仕方のないことだと思うわ!
言っても仕方ないし
まわりを困らせるだけだから
別に、言わないけど──
それにしても
私より大変そうで
忙しそうにしている大人たちは
本当にこんな時でも、
何も言わないでいられるものかしら?
いったいどんな
秘密がそこにあるのか──
子供にはわからないものなのか?
──そんなに子供というほどでもないけど。
というわけで、何も言うことのない
麗の日記は今日はここで終わり。
あなたもばたばた大変そうだけど──
小さい妹のほうが
落ち着いているみたいに言われても、
何か──大人のそういう──私の知らない仕組みで
しっかりするといいんじゃないかしら。
まだまだ、台風が近づくのはこれからだけど──
必要な時、私だって
カップラーメンを作るくらいの手伝いはできるから
安心していいからね。
それじゃあ、いろいろあるだろうけど
簡単に文句も言えない立場同士、
雨も風もまだそんなに激しくないうちに
なるべく体を休めておいてね。

夕凪

『台風だ!』
大きな台風が
近づいている──
という。
夕凪の街にも
風を吹かせ、
雨を呼び、
早めの防災準備で
おうちの中はあわただしい。
これじゃあ
お外にも遊びに行けないし、
連休も何もできないよ!
こんな台風、
夕凪のマホウが
もっとしっかりしていれば
どこか壊れるものもない広い場所へ
そらしてしまうのに!
でも台風をそらすマホウなんて
どんなお話でも
あまり聞いたことがないし、
普段はうたっておどって
みんなを幸せにするくらいしか
できない夕凪では
さかだちしても
どうにもならない……
でもね!
夕凪はいつだって
はっぴーで
らっきーで
はねむーんを忘れない女の子。
お兄ちゃんの妹。
世界でいちばん──
明るく優しい家族に囲まれて
誰もが認める世界でいちばん、前人未到
大好きなお兄ちゃんといつも一緒にいられる
すごいことが起こっているのだから──
今まで誰も
経験したことのない、
台風の備えだって
できるに違いない!
風が強く吹いても
そんなに怖がらないでいられて──
雨が降っても
お外で遊べなくても
文句を言っても仕方がないから
がまんできる。
そんなスペシャルな良い子が
この夕凪の街の
夕凪の楽しい家族が住むおうちに
あらわれるとしたら!
でもでも、本当にそんなことってあるのかな。
台風は近づき、
みんながそれぞれの
できることをする──
夕凪のおまじないが、
どうかかわいい良い子をおうちに連れてきますように!

青空

『ねてた!』
あっ!
よくあそんで
よくおどっていたら
そら、
ねむくなったから──
そうしたらもう
こんなじかん。
ゆうがただ!
おうちにもどるじかんだ!
てをつないで──
うたをうたって──
もう、おそとで
あそぶじかんはないよ。
うわーん!
うっわーん!
もっと
はしりたくて
げんきいっぱいなのに!
ねないで
あそびたかったー!
そしたらね、
ねるこはそだつから
そらはすぐ
おおきくなって
もっといっぱい
いろんなあそびができるってきいたの。
おにいちゃんも
おねえちゃんたちも
こどものときは
よくねた。
ねて
ねて
またねた。
だからおおきくなったの!
そうなの?
おにいちゃんも
こどものときは
よくあそんで
よくねて
おおきくなったの?
どのくらいねたの?
そらくらいのとしの
こどものころ──
こどもは
ねると
おおきくなる。
そんなことって
ほんとにあるの!?
そら、
おおきくなったら
おにいちゃんみたいに
はやくはしって
おにいちゃんみたいに
ちいさいこどもとあそんであげるよ。
どんどん
ぐんぐん
あのこもこのこも
そらも──
こどもがそだつよ!