綿雪

『あの頃と』
ホタお姉ちゃんの様子が
なんだかおかしい!
考え事をしているような顔。
遠くを眺めてぼーっと──
みんなが話しかけて
やっとこっちに気付くの。
なにがあったの?
今日もいつものとおりに
みんなで食べる
ごはんもおいしいのに?
これはもしかしたら──
小さい子にはわからない
おとなのことかもしれない。
あの顔は──おそらく、
みんなにどんな服を着てもらったら
かわいいか?
快適か?
誰よりも、明るい笑顔の女の子になるだろうか?
考えているときの顔だと思うの。
いよいよ新しい夏の気配が
高い空のまぶしいところから降りてきたのに、
今日からはまた雨がぽつぽつ。
大家族ではいつも悩むことになるの──
おうちのかわいいみんなに
今、着せてあげたい服は?
すぐれた魔法の指先から
なんでも作り出せるようなお姉ちゃんたちでも
悩む声がときどき聞こえる──
そこまでとは!
それはいったい
答えが見つかる問題なかな──?
むずかしい話のようです。
ユキも風邪をひかないようにって言われるし
心配させているかもしれない。
でも、大丈夫!
このところ体の調子はいいの。
寒そうにしている子も
暑そうな薄着の子も
今ならユキはたちまち見つけ出して
どんな問題だって解決してテンペスト成敗!
だといいな──
ホタお姉ちゃんがよくみんなのことを思って
大事にしてくれるのは
なんとなくユキにも伝わる気がするよ。
ときどき大変そうな家族のところに
ユキがたちまち見参!
少しくらいは力になれたらいいと思う──
ホタお姉ちゃん、今日は寒いから体に気を付けてね。
ぼーっとしていると、風邪をひいてしまったら
ユキは元気なのにって笑われますよ。

ヒカル

『またしても』
あ!
まただ!
小さい子がお手伝いで済ませるはずの
掃除や洗い物が
あとまわしになっている──
原因はわかっているんだ。
連休の間は
いつも家族の誰かがいて、
一緒に歌いながら
協力をしては、
人手に助けられてすぐに終わらせて
また遊びに出たものだった──
今になって、一人でやらないといけなくて
さみしい思いをするのは
なかなか大変なものがあるだろう?
そりゃあ、やらなくちゃいけないし
次第に慣れるものなんだろうけど
私たちが小さかった頃も
にぎやかな毎日が──また用事の多い日常に戻っていくと
物足りないことが
あるっていうのは──
よくわかるんだから。
そんなに厳しくは言えない気がするんだ──
こういうとき、ごほうびがたくさんあって
お手伝いをしたらおやつが出るとか
一緒に遊んであげられるとかだといいんだけど、
やっぱり連休明けは
みんな用事がたてこんでいる人が多いから──
私だって、部活動の助っ人で
あちこちに顔を出すことが多いからな。
うーん──
せめて、同じくらいの運動ができて
代わりになれて
もし入れ替わってもばれないくらいの
ちょうどいい人がいたらと思うけど、
そんな都合のいいことは
なかなかないもんな。
連休中に、いっぱい体を動かして遊んだけど
私のスタミナにそれなりについてきて
しかも、まわりのみんなにも目を配って
ちゃんと世話を焼いてあげられる人は
オマエくらいしかいなかったし──
……
入れ替わったら──
ばれるよね──
家族のことをゆっくり見ていられる時間は
そう簡単には作れそうにないな。
私たちって、背格好は似ているんだよな。
──もしかしたら、
いや、さすがに無理かな。
やめておこう、こんな話が着せ替え好きの蛍あたりの耳に入ったら
どうなることか。
オマエも忘れていいんだぞ。
忘れるべきだ。
それがいい。
さあ、明日は少し早めに帰れるといいな──

観月

『うつろ』
むにゃむにゃ──むっ?
ここは──
そうか、夢を見ていたか。
いい夢だった──ような気がする。
毎日がとてもいいお天気で、
いろんなところで
みんなで踊ったりしながら
長いお休みを過ごしたのじゃ。
なに、それは
現実にあったことで
つい先日に連休は終わってしまったと?
そうだったか──
では、あれもこれも
きっと本当にあったことと
あまり変わらないのだろう。
お外の遠い場所にも出かけて、
夢の中でもやっぱりわらわは
兄じゃに会いたくて、
わがやに帰るのを
楽しみにしておったな。
大人になるまで
長いお休みは続き──
体が朽ちても
会いたい気持ちが残って
日が昇り、日が暮れて
全ての大地は海にのまれ、
海は大きな火にまかれて
見つめる景色が
ちっぽけな塵だけになり、
塵は間もなく
お互いを恋しいと繋がりあい
星を生む。
むかし、どこかの
ご本で読んだとおりだったな──
いろんな人に
あったようでもあり──
花が咲くのを楽しみにしていたような
おぼえもある──
歌も踊りも習ったはずなのに──
寝起きの頭では、はっきりせぬの。
そうか、お休みはもう終わったのか。
そうそう──
ちっちゃな子が、おうちに早く帰るには
地図を見て──
目印を見つけるとよいとも聞いた。
これは、大事なことを思い出した気がするぞ。
さっそく、忘れないうちに
このあたりの地図を書いておぼえておくのじゃ。
目印になる
山の稜線──
見上げる星の色──並んだ形──
地元のおいしいお料理も
咲いている花も見つけて
そこに住んでいる人たちの顔も
なにがあっても忘れなければ
すぐに帰れるのじゃ──
わらわはかしこい良い子だとほめられたから、
そのくらいはすぐにできると思うぞ。
誰に褒められたのだったかな──?
夢を見る前の兄じゃだったかもしれぬな。
たくさんよいことをおぼえたら──
また兄じゃはおどろくであろう?
このあいだまでのお休みは終わった──これからは寄り道をしないで帰ることにしよう。

真璃

『雨!』
雨ね!
雨かあ──
ううん、わかってるわ。
言わないで。
マリーも知っているの──
雨の日に、お部屋で二人
窓の外を眺めたり
時にはお互いを見つめあうだけで
世界は二人だけになったりする──
それもいいけれど。
でも、せっかくの
連休明け。
きょうだいがいっぱいいる子は
とにかく走って
体をきたえて、
足が速くなったのを
お友達のみんなにも見てほしい!
という気持ちは
やっぱりあるのよ──
さわやかに駆けて行く
汗を流し
ちょっとくらいではへこたれない
いつも全速力。
そんな子が
ここにもいるというのに!
雨ではなかなか
そんなにいいことを教えてあげられないわ──
マリー、ぜったいみんなを追い抜いて
走れると思うのにな。
でもまあ、世界のどこの王様だって
お天気を思いのままにするのは
なかなか大変そうだものね──
わかった!
マリー、お部屋の中でできることをする!
となると──
お休みの間、一緒に遊んでくれた
春風お姉ちゃまとユキちゃんのお手玉や、
かわいいお歌なんかがいいのかもしれないわね。
春風お姉ちゃまのお歌は
ときどき、大人っぽくて
マリーにはまだわからないときもあるけれど──
でも、春風お姉ちゃまが
マリーたちのお歌を覚えようとしてくれたの。
マリーも──覚えるわ!
難しくてもがんばるわ!
英語でも──
昔の言葉でも──
きっとちょちょいのちょいだわ。
マリー、このおうちの子供なんですもの。
おまけに良い子で
お手伝いもして、
よくほめられるもの。
連休明けのマリーはいつもと一味違う──
誰より一番
愛らしく変わったわ。
風も鳥も、
やがて厚い雲から顔を出すお日様も──
それを知るのは間もなくね。
お休みの間に輝きを増して、
世界はマリーを迎えてまた華麗に変わっていくのね──きっとそうね!

綿雪

『なにもかも』
みんなとお風呂に入るのは楽しいの。
いい香りがして、
さっぱりするし、
それに、お兄ちゃんも春風お姉ちゃんも
みんなが一緒にいるでしょう?
良い子にしていないちびっこを見るのは
はらはらするけれど、
お兄ちゃんやお姉ちゃんたちがいるから大丈夫。
ユキは──
まだ子供だから、こわがりで
ちびっこも言うことを聞いてくれないけれど、
おおきくなったらやっぱり
立派なお姉ちゃんを見習って
お風呂で少ししっかりするようになるのでしょうか?
連休の毎日は楽しかったですね。
明日から、みんなは学校に行って
ユキも自分の体をちょっと気を付けなくてはいけない
毎日がやって来るけれど──
なんとかがんばっていきたいです!
おうちのみんなといっぱい遊べて、
みんなが仲良くしてくれて──
それに──春風お姉ちゃんのこと!
いつもやさしくて明るくて
みんなのことをよく見ていてくれる──
ユキも心配で体調が悪くなりそうな時でも
頼れるお姉ちゃんがいれば安心できるの。
私たちのおうちには、
体の弱いユキだけではなく
お兄ちゃんもいて──優しいお姉ちゃんたちもいて、
だから大丈夫。
いつもうれしい──
なんにもつらいことも、悲しいこともない。
今日は、春風お姉ちゃんに
新しいお手玉の歌を教えてもらったの。
ユキはそれで
お手玉が少し上手になって──
みんなにほめてもらえたの。
お兄ちゃんも見ていた?
ユキの上手なお手玉
世界中の人に見せて自慢したいの──
春風お姉ちゃんに教えてもらったおかげだよって。
おうちのみんなも、上手だよって言ってくれたんだって。
そんなことを──自慢したらいけないかな?
いいでしょう──?
今日の母の日に、いつもいそがしくて大変なママに
ありがとうを言えたけれど、
でも実は、もっといつもありがとうを言いたい人も──
ありがとうを言いたくなる時もいっぱいあるんです。
お兄ちゃん、連休が終わってもユキのことを忘れないでくださいね。
いつか大きくなって──やさしいお姉ちゃんになるのを見ていてね。
また来年も、この季節に楽しい連休を過ごそうね。

春風

スペシャル』
ででっ
ででっ
お休みの毎日を
楽しく良い子で過ごす
わがやのかわいい子供たち──
いつも明るい良い子たちには
春風がいっぱい
遊んであげて、
一緒に走ったり
歌ったり踊ったり
してあげたい!
春風はあんまり
走ったりも歌ったりも踊ったりも
得意じゃないけど──
かわいいみんなに
いっぱい好きなことを
させてあげたいな。
みんな、すぐに
やりたいことを
見つけてきては──
踊りたがる、
歌いたがる、
走りたがって止まらない!
どこにそんなに
いいものがたくさんあるの?
春風が知らないことばかりを
教えてくれるの。
春風──ついていけるでしょうか?
子供の頃から
そんなにいいものを
いっぱいは──
見つけられなかったことが多いし、
でも──おうちのかわいいみんなは
春風もよく
洗濯物を干すときにいつも
鼻歌を歌っているから
きっと上手なはずだ!
と、目をきらきらさせている。
いつものつぶらなひとみで見ている──
どきどき──
ああ、私の王子様──
春風は本当にかわいい子たちのように
明るく楽しく
いつもみんなを笑顔にさせられるでしょうか──
歌いたい歌も
踊りたい踊りも見つけられるでしょうか。
もう少しだけ、お休みはあるのだから
春風はもう少し、みんなとがっつり遊んで楽しみます。
良い子たちに──春風があまりおもしろくないかもしれないと
気付かれないで
ちゃんと特別なお休みを、一緒に楽しくいられるかしら?

『大仕事』
ああ疲れた。
大家族の買い出しというのはいつも大変だ。
連休ともなればなおさらだろう。
それに加えて、今回はさらに
がんばった翌日だというのに
連休の合間に学校へ行く用事が入るのだから
毎日とてもがんばっているな。
本当にえらい!
ああ、もちろんがんばった小雨と夕凪たちのことだ。
それに家の中の仕事も多いし
みんなが家族を支えている一番のがんばり屋だと言っていいだろう。
どんなお手伝いをする子も胸を張っていいのだ。
本当にえらい!
ああ、もちろんみんなのことだ。
オマエも連休中にみんなをよく守ってくれているな。
それにしても、この時期何かと気を使うことも多い買い出しだったけれど、
誰かがやると決まっていることだからな。
こんなに喜んでもらえるのであれば
やりがいがあるし──
またみんなが困っているときに
やってもいいかもしれないな!
小雨と夕凪なら
体力的にもちょうど休憩のペースも合うし
大変なところもあるが、なんとかなるくらいだったな。
ううん──だけど
みんなの役に立つからまた行きたいと言い出すと
家の中の仕事を任されることも多いからな。
いつも様子を見に来るから
適度に休憩しにくいし──
でも、コロナがはやって買い出しに行く機会が減ったのは確かだけど
気を使うにしても
こんなに大変だったかな?
まあ大変だったんだけど──あまりにも昔のことのようで
すっかり忘れている。
人間の記憶は、時間が経つと
苦労したことは忘れていい思い出が残るというけれど
宇宙の歴史から見ればちっぽけな私程度では
そんな実感があるほど長生きしていないはずなんだ。
本当に昔も大変だったのか?
これは──謎を解くためにも
また買い出しの時は立候補してみないといけないな。
それに、あんまり人のいない休憩場所ならいくつも候補を知っているし
一緒に行く仲間にも役に立てると思う。
だから今日は疲れを残さないように休むことを重視しよう。
連休の合間にもちゃんと学校に行って
無事に帰ってきてえらい!
みんなのことだ。
でも、私のことをほめてもいいんだぞ。
オマエもそうしたい時だってあるだろう。