吹雪

『ウェイター』
小さな子供たちが
よく遊んで
おなかを空かせることが増えたので、
おやつや飲み物を運ぶ
お手伝いの役目がかつてなく必要とされています。
積み重ねたホットケーキ、
なみなみと注がれたミルク。
お手伝いの手はどれだけあってもいい。
背の高い姉たちと、
力のあるキミもいて
ふだんはちょろちょろおじゃまをする
子供たちが協力し合い、
家族の食事は
やがてテーブルへと運ばれます。
こういう時──
いっぺんにたくさん持てるような
力強さ──
こぼさない水平を保てる
器用さと筋力──
日常生活を送る上では
それほど頻繁に活用する場面もなく
小学生とあまり縁のない
お手伝いの能力が──
家族で過ごすことの多いこの春の時期には
もう少しあればと
考えることも増えています──
でも、筋肉は
一日や二日では鍛えられるものではない。
またこれから──
みんなと過ごす時間が続けば
体力も含めて、家の中での仕事も
効率的にこなせるようになっていくでしょう。
まだ今のところ──あまり想像しにくい未来ではありますが、
今日はどうやら
思ったよりも仕事をこなせたようで
お外で遊ぶことが増えてみんな力が付いたのかな?
と、驚いたように声をかけられる時もありました。
いつもよりも
山盛りのホットケーキ。
何人分か、少し多くの妹に届けられるミルク。
いつもよりおなかをすかせて──
多めの量を必要としていそうな胃袋も
一人、二人──正確な数はともかく、日頃より多いようです。
おやつを待つ声がそのまま
お手伝いを探してキッチンへと向かう力になる──
また晴れの日が続くなら
にぎやかな声はますますやまないことになるでしょう。

星花

『まだ眠い』
ふわああ──
よく遊び
よくおやつを食べて
みんなもすっかり眠くなった。
これはやっぱり
ぽかぽか陽気が理由だ。
遊んでも遊び足りない
楽しい季節が原因だ。
こんなにいっぱい夢中になって
かけっこをしたんだから──
もう少し休んで
元気を取り戻すのが先だ──
でも、目を閉じて
あたたかな日差しを浴びながら
眠ってしまったら──
ちょっとだけ遊ぶ時間が減ってしまって
なんだか物足りない気持ちになったりもする──
うーん、いったい
大人のお姉ちゃんたちや
お兄ちゃんは──
こんなとき、どうやって解決したのだろう?
きっとまた遊ぶんだから
時間が来たら起こしてね、
少し休憩するだけなんだからって
誰かに頼んでおくとか。
もしかすると、大人の人が落ち着いて
静かに飲んでいるあのコーヒーのおかげで
また外で遊ぶ元気を取り戻せるようなことが
あるのかもしれないし──
うーん、いけない。
考え事をしていると
ますます重くなるまぶたは──
もはや誰の力をもってしても
支えきれない。
豪傑も眠気には勝てなくて──
いつもわがままな子供だって
もう、こんなに窓辺があたたかくていい季節には
いつまでもお外を飛び跳ねてばかりはいられない。
ずっと帰らないままではいられない──
今日もおうちでは
あたたかなお部屋で
お昼寝しながら過ごす子供たちが
ひとり、ふたり──
かけてもらっている毛布が、一枚、二枚──
毛布のもとになった羊が
一匹、二匹──
すやすや静かなこの子たちが、やがて目を覚ましたら
またにぎやかになる──
それまでは、あまりに気持ちがいいのが
ぜんぶぜんぶの──全ての子供たちを安心させて
こんなにのどかな時間ばかりにさせてしまうのだ。
今日も穏やかでやさしい春の日でした。
こんな日には、あたたかさに誰もあらがえないみたいなのです──

青空

『おなかがすくよ』
あー
よくあそんだ!
そらはまいにち
あそぶのがおしごと。
はるがきて──
みんながそらをよんで
あそんで
あそんでっていうから。
そらがよろこんで
あそんで
あそんでっていうから。
はしって
ころがって
よくなくよ。
とてもあおい
よいはるのひ──
そらがあそんでいるよ。
からだを
うごかしているよ。
そして──
おなかをすかせているよ!
それもそうだ。
はしったからね──
ころがったからね──
ないたからね。
それはもう
ぐうぐう
おなかがなるのは
もう、きまっている。
いいかぜがふく
はるのひだ──
こんなにいいなら
あそぶしかない
はるのひだ。
そらが
おやつをもとめておうちにかけこむ
そんなはるのひが
きょうもやってきたのだ──
あかるいおにわで
はしりだしたそらを
とめられるものは
もうせかいのどこにも
ないに
ちがいない──

綿雪

『まだまだ』
もっと、もっと──
まだ春を
遊び足りない。
お姉ちゃんたちと歩いて──
散歩道で
お兄ちゃんと手をつないで、
花の咲く道を行く。
桃色の花びらがはらはらと
降り注ぐ道を──
向かう先は、みんなで遊ぶ公園や
みんなで使うもの、食べるものを探すお買い物。
そしてただ
景色が良くて、吹く風が気持ちよくて
お兄ちゃんやみんなと一緒に歩きたくなる
そんな街の中を行く──
こうして春を過ごしています。
ユキはあんまり
みんなとお出かけをすることがなくて
おうちにいることが多かったから──
いつもの通学路を外れると
どこを歩いても
あまり見かけない眺め。
どきどきして──
お兄ちゃんの手をぎゅっとして。
ちょっと疲れて──
おうちに帰って来ると
ほっとしたり。
ユキの知らない風景が
どこにでも広がっていることを知って
胸の中にその思い出をしまって
帰るのでした。
それでいて──
おうちでお姉ちゃんたちと話して
明日はどうするの、
ユキちゃんもまた──
みんなとお散歩に行くのかな?
あたたかくなった春の景色。
ユキがまだ何にも知らないことばかり──
ちょっと考えて
いつのまにか自然と出てくる答え。
こぼれることば──
まだ、ユキは
遊び足りないから
もしも明日も出かけていいのなら、
行ってみたいな。
まだ知らないところがたくさんあると思うの。
海晴お姉ちゃんのお話によると
明日もいいお天気でお散歩日和。
新しい出会いを見つけ、
好きな人とずっと仲良く過ごすには──
いちばんの
とてもすばらしい日になりそう。
きっとまた、いろんなことがある日になるでしょう──
とのこと。
お兄ちゃんは、海晴お姉ちゃんの予報はどこまで本当になりそうだと思う?
おうちではよく当たるってみんなに信用されているんです。

立夏

『春はやがて』
今年の春も
いっぱい楽しんだ!
お弁当をみんなで作って
桜色に囲まれるお庭に広げたり──
いい季節になって
これからにぎやかになっていくのは
おうちの中ばかりではなく
花壇のほうもそうなのだ。
小雨ちゃんたちと土いじりをして
汗をかいたり──
忘れてはいけない
過ごしやすい季節の一番の楽しみ、
よく日の当たる窓際で
集まった家族のみんなと過ごして
いろんな話をして
ぽかぽかで眠くなったらゆっくりしたっていい──
気持ちのいい日向ぼっこができた。
これでもう
今年の春は思い残すことも何もない。
もうすぐやって来る
だんだん近づくあの連休に向かって進むのみだ。
それで特に問題はない──
待てよ、本当にそうだろうか?
立夏の野生の勘が
何かを告げようとしている──
それはいったい?
今年は春らしい時間をいっぱい過ごした。
とてもいい季節──
楽しい日々。
これから先、目を閉じると
きっと浮かんでくるような
忘れられない──みんなで過ごした思い出。
咲き開いた花に包まれて
あたたかな時間ばかりがあって
これ以上を本当に望むことがあるのかな?
もしあったとしても
来年もみんなで過ごしたいと言った
次の楽しみにとっておいたって
なんにもいけないことはない。
でも──心の中で声がする。
ひらひらと桜が散って
これからまた
楽しい季節がやって来るんだって話をして
こんな景色の中を
大好きな人と歩けたら。
そんなにいいことを
誰に遠慮をすることがあるだろう。
欲望のままにやってしまえ。
あれっ!?
ささやく声は
あまり野生の勘とかいうのではなくて
もしかして心の中の天使と悪魔の
片方だけがあらわれてしまったようだな?
天使のほうは
春の陽気でまだ寝ぼけてしまっているようだな──
たいへん! どうしよう!
でもまあいいか。
あたたかくて陽気もいい──
こんな毎日に悩みや問題なんて
なにひとつないに決まっているんだから、きっとそうだ。

氷柱

『休息』
春めいてきた
あたたかさだったり──
曇り空の下、強い風が吹くと
まだ寒かったりで
不安定な季節。
気温の変化で体調を崩してもいけないし
春を楽しみ尽くしたい気持ちも
たまには抑えて、
意識して休憩をとる時間も必要なの。
なにしろ、ここしばらくは
たっぷり遊びたい春休み、
何かと体力が必要になることも多い新生活、
そしてもう少ししたら
きっとさわがしくなる連休まで
やって来るというのだから
この時期を楽しもうとするなら
なおさらきちんと
体調と相談しなくては。
あんまり気候が落ち着かないと
ユキも何かと大変そうだし──
隣で一緒に休んで
調子を見ていられる家族がいたら
安心だものね。
というわけで
私が自分の意志で、休む日だと決めたら
もう何があっても動かない。
てこでも動かない。
せいぜい、日向ぼっこしながら本を読むくらいで
春らしいお出かけを誘う、どんな言葉があったって
氷柱の心を変えることなどできない──
こんなこともあろうかと
おやつは買い置きがあるし
片付けやお手伝いの用事も
自分の役割は大体済ませた。
そう──
何かとばたばたすることが多い春の毎日に
とうとう見つけた
ゆっくり穏やかな休日。
だめよ!
こんなのどかな時間を利用して
新しい趣味を始めようとか──
学校の予習を先まで進めておこうとか──
ましてや、ホタ姉様の突発おやつ作り教室にまで参加して
スキルアップを目指すできる女なんて──
今日の氷柱は、
この日だけは何も知らないで
のんびりゆっくり
人間がもっとも優雅な時間を過ごす日にするの。
そういう春だって、あっていいでしょう?
またどこかでにぎやかな声がして、
やがてもうすぐ
どうしたって
いろんなことは始まってゆく──
まったくもう。
変わらないことなんて何一つないみたいだわ。
今日の私だけは──そんなこと忘れているんだけどね。

『桜の季節』
あ!
またしても
子供たちがおやつを食べ過ぎて
せっかく用意したごはんを残している──
でも、仕方ないのもわかるんです。
なにしろ季節は春。
お花を見ながら
おいしいものだって食べたくなる。
街を歩けば目に入る
桜スイーツの数々。
今年も新商品が生まれるらしい──
そして定番の桜餅。
いま、食べたいものはたくさんある。
季節を感じる食事は
何よりもうれしい──
お店で選んで
おみやげに持って帰れば
喜んでくれる子だってたくさん待っている。
うーん。
こうなったら
蛍も春のスイーツを試してみるべきか?
自分で作ればなんでもありで
自由自在。
時には季節を先取り、若葉の頃を
織り交ぜてみたりして──
やがてアイデアは膨らみ始めるのだから。
でもあんまり
栄養が偏ってばかりいるのも
どうだろう?
元気が続かなくなる原因だ──
桜スイーツも食べつつ
栄養もとりつつ
お肉も魚も野菜までをも友にして
体を作りながら毎日を過ごすには──
良く遊び運動する?
みんなともっとお外を歩く?
そして──春のスイーツを見つけて
蛍の対抗心はまたしても燃え上がる?
でも、なんだかんだ
お散歩はいいですね。
運動にかこつけてみんなとお外を歩くのも
楽しそう──
そうなると、おいしいおやつを作る理由も
たくさん歩いてからですよ!
っていうのもいいのかしら?
まだまだまだ
春を楽しみ足りない毎日──
明日もおいしい、いい春の一日になるといいですね!